
宮崎大学(宮崎市)は3日、花王や宮崎市との共同研究でネコのウイルス感染を簡易検査できる手法を確認したと発表した。市販のあぶらとりフィルムで採取した皮脂に含まれるRNA(リボ核酸)を分析して、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)と猫免疫不全ウイルス感染症(FIV、ネコエイズ)の検出に成功したという。
SFTSはマダニを媒介とし、ヒトにも動物にも感染する。感染した人や動物の血液などを介してもうつる。発症すると、発熱や嘔吐(おうと)、下痢、意識障害などの症状が出る。宮崎大によると、致死率はヒトが10〜30%、ネコは60%と高い。有効な治療法は確立されていない。
花王が開発したヒトの肌や体の状態を把握する「皮脂RNAモニタリング」という技術をネコに応用した。従来の血液検査に比べネコへの負担を軽減できるほか、獣医師のSFTS感染リスクを減らせる。
宮崎大はネコの皮脂からのRNA検出感度が高く、ヒトのDNAやRNAと見分けられる「プライマー」と呼ばれる遺伝子増幅に必要な因子を開発した。「偽陰性」が出ることを防ぐ。ネコの皮脂は耳から採取する方法が最適といい、かまれるリスクも低い。
SFTSについては血液検査で感染が確認されたネコから採取した皮脂を動物病院から入手して、RNAの検査でも陽性を確認した。FIVについては皮脂による検査での陽性21体と血液検査の結果が一致した。
宮崎大農学部の斉藤暁准教授は「情報量の多さで血液検査に完全に置き換えられるものではないが、早く陽性の判断ができることで感染を広げるリスク低減に役立つ。動物に対する検査としては有効性が高いのではないか」と話している。
将来は自宅の飼い猫の皮脂を採取して、動物病院などに郵送して検査できるようにすることを目指す。
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