武田薬品工業とエーザイは8日、それぞれが開発する睡眠障害「ナルコレプシー」の治療薬候補の臨床試験(治験)結果をシンガポールで開催中の学会で報告した。武田薬品は最終段階の、エーザイは初期時点の治験結果をそれぞれ発表し、有効性や安全性を示した。

ナルコレプシーは日中に過度に眠気を感じたり、突然眠ってしまったりする神経疾患だ。感情が高ぶると脱力する「情動脱力発作」という症状もある。

武田薬品は治療薬候補「TAK-861」の最終段階の治験を19カ国で実施し、1日2回投与で12週間にわたって効果を確かめた。偽薬(プラセボ)と比較して、最高容量の投与を受けた患者の約85%が健常者と同程度まで主観的な日中の眠気が改善されたほか、発作の頻度が減った。

武田薬品は2025年度中に米国含む各国で承認申請する。グローバルのピーク時売上高は20億〜30億ドル(約2900億〜4400億円)以上と想定する。

エーザイも8日、治療薬候補「E2086」について、初期段階の治験で安全性を確認したと発表した。1日1回投与で、プラセボや既存薬と比較して日中の覚醒度を改善する可能性も認められた。25年度中に中間段階の治験を始める。

どちらの治療薬候補も、疾患の原因に関わる「オレキシン」という物質に作用する新しい仕組みの薬だ。オレキシンは覚醒をつかさどる神経伝達物質だ。エーザイはオレキシンの働きを利用した不眠症治療薬「デエビゴ」を発売しているが、ナルコレプシー向けの治療薬はまだない。

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