NHK放送センター(東京都渋谷区)

NHKの稲葉延雄会長は17日の定例記者会見で、民放と中継局を共同利用する構想について事業化が「難しくなった」と明らかにした。コスト試算を通じて費用対効果が想定を下回ると分かったという。稲葉氏は「代替案を含めて検討を進める必要がある」として、事業の枠組みなどを抜本的に見直す考えを示した。

NHKによると、8日までに全国の放送事業者へ利用料などの概算を提示した。資材価格の上昇に加え、コスト削減の柱としたブロードバンド(高速大容量)通信による放送の代替も困難だと分かった。稲葉氏も「全体としてコストメリットが想定より相当小さくなった」と指摘した。

稲葉氏は「基本的な考え方に変更はない」と述べ、今後も民放との協議を続ける考えを示した。NHKとして600億円を同事業に支出する方針にも変更はないと説明した。NHKが2024年末に設立した準備会社の扱いなどは「議論が至っていない」として明言しなかった。

生成AI(人工知能)を用いた検索サービスによる記事の無断使用への対策にも言及した。稲葉氏は「高い関心を持っている」として「NHKの正当な利益が侵害される形で(記事などが)AIの学習に使われるようなことはあってはならない」と述べた。

稲葉氏は「まずは実態をしっかり把握する必要がある」として、実際に調査を進めていることを明らかにした。米パープレキシティなどが同局のサイトからどのように情報収集しているかなど、AIによるコンテンツの利用状況について、専門家の支援も得ながらアクセスログの解析やAIによる出力の内容について詳細な分析を進めているという。

NHKでは10月からネット配信が「必須業務」に格上げされる。受信料負担の公平性の観点で記事の無断利用など「フリーライド(ただ乗り)」への徹底した対策を求められる。稲葉会長は「(AI事業者側の)行動をよく吟味しながら適切に対応したい」と述べた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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