◆日本見送りの一方…8割の国は承認
国連本部で演説した石破氏は、パレスチナの国家承認について、岩屋毅外相がこれまで使ってきた言葉を繰り返した。「するか否かではなく、いつ承認するかの問題だ」。そのタイミングがいつかは判然としていない。
石破茂首相=19日(佐藤哲紀撮影)
国家承認は先進7カ国(G7)でも相次ぐ。国連本部での会議が続くこの時期に合わせ、英国とカナダが21日に承認を発表、フランスも22日に続いた。 トランプ米大統領は、イスラム組織ハマスへの「報酬」になるとして承認反対の立場で、ドイツ、イタリアは日本同様に見送る姿勢だ。しかし、国家承認はG7以外のオーストラリアやルクセンブルクなどにも広がり、国連加盟国193カ国の8割を超えた。 背景には人道危機の深刻化がある。パレスチナ自治区ガザの保健当局によると、2023年10月にイスラエルとハマスとの戦闘が始まってから、ガザ側の死者は6万5000人を超える。今年5月に始まった米イスラエル主導の物資配給拠点は4カ所で、国連などの約400カ所から激減。極めて深刻な飢餓が広がる。◆「ガザに沈黙と絶望が渦巻いてきている」
ガザ中部での小児治療などに取り組む国際NGOセーブ・ザ・チルドレンの診療所には「泣く気力がない」ほど衰弱した子どもらが訪れている。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのガザ事業担当の金子由佳さんは「圧倒的に食べ物が足りない。(状況は)最悪に到達してしまっている」と語る。現状の打開を世界に訴える現地の声すら弱まっている肌感覚があるといい、「ガザに沈黙と絶望が渦巻いてきている」。
岩屋毅外相=5日(池田まみ撮影)
日本でパレスチナの国家承認への反対が強いわけではない。超党派の「人道外交議員連盟」は今月11日、国家承認を求める与野党国会議員206人が署名した要望書を岩屋氏に手渡した。この議連は石破氏が首相就任の直前まで会長を務めていた。 日本のNPO法人などが5月に始めた、日本政府に国家承認を求めるオンライン署名にも3万9000超の賛同が集まる。◆日本は元々アメリカと異なる立場なのに
イスラエル軍によるガザへの地上侵攻が続き、住民に脱出を迫る圧力は強まっている。署名の実行委員会に加わるNPO法人ヒューマンライツ・ナウの坪田優弁護士は「なぜ国家承認しないのか。タイミングが遅きに失する形になることを危惧している」と訴える。
トランプ大統領(資料写真)
日本政府は伝統的に、イスラエルと距離を置くアラブ諸国とも友好関係を築いてきた。米国と異なり、パレスチナとイスラエルの「2国家共存」による問題解決を支持する立場だ。それにはパレスチナ国家の樹立が前提となる。 ならば、独自の外交判断を取り得るはずだが、沖縄国際大の佐藤学教授(政治学)は「対米依存が深まっている」とみる。 日米関係を巡っては、石破氏は持論である日米地位協定改定にも手を付けられなかった。「ディール(取引)すべきだったのに、持ち出すことすらできなかった」と佐藤氏は批判。国家承認の見送りと共通する日本政府の問題点として、「対米追従で思考停止に陥っている」と指摘した。◆日本は現在195カ国を承認
そもそも「国家承認」とはどんな行為か。南山大の山田哲也教授(国際法)は「誕生した国家に対し、すでに存在する国家が『国際法上の国家』と認める制度だ」と説明する。国家承認によって、両国間でさまざまな条約を結んだり、互いに大使を送り合ったりできるようになるという。 どの国を承認するかは各国で判断が異なる。外務省によると、日本は現在195カ国を承認。国連に加盟する北朝鮮を承認していない一方、非加盟のコソボ、ニウエ、クック諸島とバチカンの4カ国を承認している。 山田氏によると、「国際法上の国家」とみなす要件として、19世紀半ば以降の国際社会では(1)明確な領域
(2)永久的住民
(3)領域を実効的に支配し、統治する政府
(4)他国との関係を結ぶ外交能力
──の四つが必要とされてきた。さらに第2次世界大戦後、国連憲章の「武力不行使の原則」や国際人権規約の「人民自決の原則」も判断する際の基準に加わっているという。
◆「ジェノサイド」への対応を求める声
なぜ最近、欧州を中心にパレスチナの国家承認が相次いでいるのか。山田氏は「4要件で厳密に考えると、『領域』や『政府』の観点から、パレスチナを『国際法上の国家』とみなすのには疑問は残る。ただ承認は各国の判断に委ねられており、ガザで続く大量虐殺などを重く受け止め、イスラエルに圧力をかける政治的配慮が働いたのだろう」とみる。
アメリカの星条旗(資料写真)
そんな中で、国家承認をしない日本。石破氏は国連総会での演説で、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」を支持する従前の立場を強調した。イスラエルがその実現の道を閉ざす行動を取る場合は「新たな対応を取る」と語...残り 906/3025 文字
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