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<「ぐるぐる思考」や疲労感に悩む人に、科学者が提示する「シンプルな対処法」について...>
働く人の約75%が、勤務時間外でも仕事のことを考え続けてしまうと答えている。
しかし最新研究は、この悪循環を断ち切るためのシンプルな方法を示唆している。それは夜の時間を終わらなかった仕事に思いをめぐらせるのではなく、自分自身の目標について考えるというものだ。
ニューヨーク州立大学バッファロー校経営学部の研究チームは、夜に仕事以外の目標へ意識を向けることで、ストレスが減り、幸福感を高められることを発表した。本論文の筆者で組織・人材マネジメントが専門のミンシュアン・トゥ准教授は次のように述べる。
「多くの労働者は、余暇の時間にも仕事のことを考えてしまうことが最大の苦痛だと認めています。(...)しかし、頭を切り替えないと、日中のストレスが夜に持ち越され、エネルギーを奪い、人間関係を悪化させ、健康にまで影響を及ぼしてしまうのです」
研究チームは、フルタイム勤務者1085人とパートタイムで働きながらビジネススクールに通う学生137人を含む計1200人以上を対象に、3つの調査を実施した。
被験者には、夜の時間にフィットネスや趣味、家族との時間など個人的な目標について考え、その達成方法を計画するよう求めた。そして、この取り組みが「反すう思考(ぐるぐる思考)」「疲労感」「全体的なウェルビーイング(幸福感)」に与える影響を追跡した。
その結果、ほとんどの参加者にとって、職場から意識を逸らすことで、仕事から距離を置き、気分やエネルギーが向上し、さらには社会的・生理的な健康にもよい影響を及ぼすことが判明した。
「仕事中毒」という例外
ただし、効果があまり得られなかったグループもあった。それはワーカホリック、つまり仕事中毒の人々だ。
研究者らは、過剰な労働傾向と強迫的な労働傾向の両方を測定する心理学的調査を用いて、仕事中毒者の特定を行なった(「予定より長く働く頻度」や「仕事をやめたいと思っても、続けてしまうと感じる頻度」といった項目を被験者が評価)。
その結果、仕事中毒の傾向が強い人ほど、夜に個人的な目標を振り返ろうとしても限定的な効果しか得られないことが判明した。トゥ准教授は次のように説明する。
「仕事中毒の人々は、仕事上の目標に強く執着しているため、精神的に仕事と距離感を置くことが難しいのです。その結果、個人的な目標を持つという介入の効果が限定されてしまうだけでなく、むしろ仕事中毒からの回復支援を重点的に行うべき対象とされてしまうのです」
先行研究では、仕事中毒や慢性的な過労は単なるライフスタイルの問題ではなく、脳や身体への害が大きいことが示されている。
精神医学や職場の健康に詳しい専門家も本誌の取材に対し、長時間労働は睡眠障害や実行機能の低下、さらには脳構造の変化にまでつながると指摘している。
週52時間以上働く人では、処理速度の低下、記憶障害や感情調節の困難などが観察されている。
今回の研究結果は、夜の実践的な習慣を示唆するものである。つまり勤務後に個人的な目標を振り返ることで、仕事に関して考えてしまうことを抑え、職場外での生活の質を向上させることができるということだ。
本研究は「応用心理学ジャーナル(Journal of Applied Psychology)」に掲載される予定だ。
【参考資料】
ALEXANDRA RICHTER, Research examines why workaholics can't switch off, UBNow, September 15, 2025
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