山と渓谷に囲まれた札幌の人気温泉地・定山渓の登山道で23日、北海道猟友会札幌支部の会員らが登山者や観光客にヒグマへの注意を呼びかけた。クマ対策の最前線に立つ「ヒグマ防除隊」のハンターも猟銃を手に巡視した。

 隊は、札幌支部の志願者から選抜された精鋭で、人の生活圏や農地に問題個体が出没した際や山中でインフラ整備にあたる人の護衛などの現場で活躍している。奥田邦博支部長によると、今回のような「レジャー」の現場で、被害未然防止のために活動するのは初という。

 北海道の世界自然遺産・知床にある羅臼岳で今夏、登山者がヒグマに襲われて死亡した事故をうけ、実施した。

 定山渓は札幌中心部からアクセスが良く、地元では、特に外国人観光客について「『散歩感覚』で十分な知識や装備もないまま山に入り、被害に遭わないか」といった懸念の声が出ていたという。

 参加した猟友会員らは、クマ対策や生ゴミの放置の危険性について多言語のリーフレットとともに啓発した。

 4人で山に入った帯広市の女性会社員(55)は「できる対策はしてきたが、やはり安心感がある。ありがたいです」。札幌市の男性(67)は「外国人の登山者が増えた印象がある。(自治体や日本のメディアの発信が届かない場合もあるので)意義のある活動だと思う」などと話していた。

 活動は札幌市との共同開催で、10月上旬までの週末に計10日間実施する。痕跡調査の狙いもある。

 奥田支部長は「観光客が被害に遭えば地域経済に計り知れない打撃が予想されるが、現場での対策はリスクがあり、最前線を担えるのは猟友会だけ。若手の育成や社会貢献のために、新たに挑戦してみることにした」と振り返った。

 そしてこう続けた。

 「クマの行動を制御することは不可能だが、人間の行動は啓発で変えられる。一人でも多くの方に『正しく恐れる』意識を持っていただきたい」

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