
二の腕についた脂肪に悩まされている人は少なくない Tatiana Foxy-shutterstock
<腕に脂肪がつくかどうかは、ホルモン、遺伝、生活習慣など複数の要素が関係しているが>
食事に気をつけて運動もしているのに、なぜか腕の脂肪だけが落ちにくい――。そんな思いを抱いたことがあるのはあなただけではない。
腕を引き締めるのは特に難しいと感じている人が多いが、専門家によると、腕の脂肪が落ちにくいのには科学的な理由があり、適切なアプローチを取ることで状況は大きく変わるという。
腕に脂肪がつくかどうかは、ホルモン、遺伝、生活習慣など複数の要素が関係している。体脂肪がどこから落ちるかを自分で選ぶことはできないが、筋トレ、適切な栄養摂取、そして忍耐を組み合わせることで、より強く引き締まった腕を作ることができる。
専門家たちは本誌に対し、脂肪が蓄積される身体の仕組みや、自分でコントロールできること・できないことを理解することが成果を出す鍵だと語る。
スポーツ科学の学位を持ち、スポーツマッサージセラピストとしても活動するパーソナルトレーナー、アマンダ・グリムは、腕の筋肉も他の筋肉と同様、段階的な負荷増加によって成長すると述べている。重さ、回数、全体的なトレーニング量を継続的に増やしていくことで、筋肉は強くなる。
「腕の筋肉に負荷をかけると、筋繊維に微細な損傷が生じる。その損傷を修復する過程で、筋肉は強く大きくなる。それこそが(腕が)引き締まって見える要因だ」
さらに、腕立て伏せ、懸垂、ローイングなど、複数の筋肉を同時に使う運動が特に効果的であるとグリムは語る。複合的な動きは、成長ホルモンやテストステロンの分泌を促し、筋肉の発達を後押しするためだ。
有酸素運動とHIITの役割とは?
グリムは、世の中に「腕を引き締める」ことを謳う商品は多いが、部分痩せは生理学的に不可能だと断言する。脂肪は摂取カロリーよりも消費カロリーを多くする「カロリー赤字」により、身体全体から減っていくためだ。
そのため、グリムは部分痩せを謳う商品を買わないよう強く勧めている。
また、有酸素運動はカロリー赤字を作る手助けにはなるが、それだけでは筋肉を維持・増加させる効果は乏しいとも指摘する。
「HIIT(高強度インターバルトレーニング)は非常に効果的だ。有酸素運動の負荷と筋肉の維持、成長のための負荷の両方を兼ね備えているためだ。短時間の高強度の運動が、特定の筋肉群に刺激を与えることで、筋力の向上にもつながる。脂肪を燃やしつつ筋肉も増やせる『一石二鳥』の運動だ」
ただし、筋肉の輪郭が目に見えるようになるには、体脂肪率がある程度まで下がる必要があるという。個人差が大きいが、女性の場合、およそ18〜22%程度が目安とされる。
グリムは、地道な継続の重要性を強調する。「複合的な筋トレ、カロリー赤字、そして忍耐が結果をもたらす」。
変化が現れるには、最低でも8〜12週間はかかるという。極端な方法で急速に得られた成果は、往々にして長続きしない。
脂肪がなかなか落ちない場合は医師の診断も選択肢に
機能性医学(慢性疾患などに対し、対症療法だけでなく、発症原因に着目しながら、その予防と根本治療を目指す医学)を専門とする医師、クリスティン・マレンによると、脂肪の蓄積部位にはホルモンが大きく関与している。特に女性において顕著で、例えば閉経前は、エストロゲンの働きで腕・腰回り・太ももに皮下脂肪がつきやすくなる。
このような脂肪は内臓脂肪に比べて健康リスクが低いとされる。しかし、閉経後はエストロゲンの減少により、脂肪が腹部に集中しやすくなる。
男性の場合、通常は腹部に脂肪がつきやすいが、腕に脂肪が多く見られる場合は、環境ホルモン(キセノエストロゲン)などによってエストロゲン値が高くなっている可能性もある。
マレンは、腕の脂肪自体が即座に危険であるとは言えないが、BMIの上昇、インスリン抵抗性、代謝症候群などと関連していることが多く、結果的に心疾患や糖尿病などのリスクが高まると警鐘を鳴らす。
もし、食事や運動をしっかり行っているにもかかわらず、腕の脂肪がなかなか落ちないと感じるなら、一度医師の診断を受けてみる価値があるという。
重要なのは「現実的な期待値」を持つこと
脂肪の蓄積には、コルチゾールや甲状腺ホルモンといった他のホルモンも深く関与している。甲状腺機能低下症の場合、代謝が遅くなり、結果的に腕も含めた身体全体に脂肪がつきやすくなる。慢性的にコルチゾール(ストレスホルモン)が高い状態もまた、腹部を中心とした脂肪の蓄積を引き起こすが、全身の脂肪保持にも関与している可能性がある。
マレンは「身体は常にあなたの味方だ。身体がある特定の反応を示すときには、進化的な理由や利点が存在していることが多い。例えば、閉経前の女性における皮下脂肪の蓄積は、生殖の過程における生存率の向上に関係している。皮下脂肪は、妊娠や授乳のためのエネルギー備蓄として機能する」と語る。
また、「筋肉が多いことはアドバンテージだ。基礎代謝を高め、インスリン感受性を改善し、全身の炎症を抑え、健康的に年を取ることの助けになる」と、筋肉の成長を健康全体の中核として捉えるべきだと提言した。
ただし、彼女はこうも述べる。「腕の筋肉だけを鍛えても、腕の脂肪が減るとは限らない」
見た目に引き締まった状態を実現するには、全身の体脂肪率を下げることと、筋肉量を増やすことの両立が必要だ。マレンは、週に3〜5回の筋トレ、良質なタンパク質とさまざまな炭水化物、食物繊維を多く含む食品を摂取することを意識しつつ、必要に応じてホルモンバランスを整えることを推奨している。
グリムとマレンの主張に共通しているのは、「二の腕引き締め」の近道など存在しないということだ。成果を出すためには、段階的な負荷増加による筋肉の成長、脂肪減少を助ける生活習慣、ホルモンや代謝の健康的な管理が必要となる。短期的な解決策が効果を持つことはほとんどない。着実かつ一貫した取り組みこそが成果につながるのだ。
「基本的な運動生理学を"裏技"でどうにかできると思っているなら、それは幻想である」とグリムは総括した。
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