
全国から不登校生らを受け入れ、テレビドキュメンタリーやドラマ「ヤンキー母校に帰る」の舞台にもなった私立北星学園余市高校(北海道余市町、全校生徒191人)で、不当な退学処分を受けたとして、米国在住の女性(17)が、同校に約224万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁小樽支部に起こした。提訴は9月24日付。
訴状などによると、女性は約10年前に一家で米国に移住。現地で不登校となり、リストカットやパニック障害とみられる症状があるなど精神的に不安定になった。
女性は日本での再起をかけ、2024年8月22日に同校に1年生として入学。前日から寮生活を始めたが、寮母から「いびきがうるさくてみんなが迷惑している」などと言われた。これにストレスを感じ、嘔吐(おうと)した際に「汚さないで」とも言われた。
日本の生活に不慣れな女性は恐怖を感じ、入学から数日後に学校に通えなくなった。欠席すると、自室に来た教員が無理やり布団を引きはがし、ベッドの上に乗って「気合でいくぞ」などと力ずくで起床させた。教員は部屋に長時間とどまり、指導や監視を行ったという。
その結果、女性は自傷行為に及び「死にたい」と発言。学校側は傷の深さや発言を理由に、休学か退学を要求した。女性は登校し続けることを希望したが、24年9月16日に退学を宣告されたとしている。
入学後数週間で退学宣言
原告側は、パニック障害などの症状を学校側に伝えており、自傷行為や「死にたい」といった発言は予見できたと主張。必要なのは支援で、退学は学校の裁量権を逸脱していると訴えている。
女性は「死にたいほどつらいと訴えたつもりが、わずか数週間で退学と判断をされてしまい、悔しい」、母親(44)も「なんとかやり直そうと希望を持って日本に来たのに、配慮に欠ける対応で挫折体験になってしまった。裁判で区切りをつけたい」と話した。
同校の今堀浩校長は8月、毎日新聞の取材に「教員が布団をめくったのは事実だが、1度だけで強迫的ではなかった。さまざまな事情を考慮した上での退学処分で、正当な判断だった」と説明した。
同校は1965年開校。88年から高校中退者や不登校生らを積極的に受け入れ、元副文部科学相の義家弘介氏が卒業し、「ヤンキー先生」として母校の教壇に立ったことで知られる。【伊藤遥】
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