香川と岡山の島などを舞台とした3年に1度の現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭2025」が開かれている。11月9日までの秋会期には、今回から新たに宇多津エリア(香川県宇多津町)が加わった。春、夏、秋会期と続いた瀬戸芸も最終盤となる。瀬戸内の文化や暮らし、景観などに刺激を受けて制作された独創的な作品を紹介する。

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シガリット・ランダウ「Capacity」

 塩の持つ美しさを教えてくれる作品だ。漁網が、白い塩の結晶で覆われて毛布のような厚みになっている。結晶は一粒ごとに、光を丁寧にはね返す。

 イスラエルに住むアーティストのシガリット・ランダウさんが、身近な存在だった死海に物体を沈めて制作した。体が水に浮くほど塩分濃度の高い死海に物をつけると、1カ月ほどで塩がもこもこと結晶化するという。

 かつて塩の一大産地として栄えた香川県宇多津町で展示されている。農協倉庫として利用されていた「こめっせ宇多津」には漁網のほか、黒いドレスが徐々に白く変わる様を写した写真パネルも。近くの閉店した靴店では、ハイヒールやブーツ、スニーカーの面影を残した「塩の靴」も陳列されている。

 宝石で装飾したような輝きだが、写真には写らない美しさがある。それはかつての「塩の町」、宇多津を訪れなければわからないだろう。

香川県宇多津町【アクセス】

 こめっせ宇多津は、町役場の道向かい。会期中はJR宇多津駅、町役場、臨海公園を回る無料のシャトルバスがある。

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