少子化が進み、たくさんの学校が閉校している。自治体は校舎などを有効活用しようと、民間の力を借り、様々な施設に生まれ変わらせている。
10年前に閉校した佐賀県玄海町の旧有徳小学校が8月22日、生成AI用のデータセンターに生まれ変わった。東京の企業ハイレゾが町から校舎などを無償で借り受けて一部を改装し、三つの教室に高性能のサーバー計120台を設置した。
データセンターは大量の電気を消費するため、電気代などコストの安い場所を探す中で玄海町での立地を検討し、町から廃校の利用を提案されたという。
同社は香川県でも来年1月、廃校にデータセンターを開所する予定。建設費は用途や規格によって大きく変わるが、廃校を活用すると通常の10分の1から20分の1に抑えられるという。学校は耐震など構造がしっかりしており、開所までの工期が短く済む利点もある。
志倉喜幸社長は「データセンターは需要に応じて規模の可変が必要だが、教室単位でサーバーを増やせるので対応しやすい」と語る。
「学校跡地が使われず、どうにかしたかった。雇用がうまれる場になってよかった」と脇山伸太郎町長。町の担当者によると、立地を希望する企業に廃校を提案しても、維持管理費や修繕費がかさむことや、3階建てで使い勝手が悪いなどでこれまで反応はよくなかったという。「学校が活用できることがわかった。町内の他の廃校も売り込んでいきたい」。
文部科学省によると、2023年度までの20年間に廃校になった公立の小、中、高校などは全国で8850校。学校は地域の中心的な存在で住民の愛着も強い。解体には費用がかかることもあり、多くの自治体が有効活用に知恵を絞り、文科省も後押ししている。
山口県美祢市では旧赤郷小学校が、教室に水槽を設置して車エビの養殖研究施設になった。鹿児島県指宿市の旧徳光小学校はビール醸造所に。コワーキングスペースやグランピング施設、レストランなど多様に生まれ変わっている。
18年に閉校した福岡県うきは市の山間部にある旧姫治小学校にこの夏、再び子どもたちの歓声が響いた。市が公募した跡地活用案に静岡県の会社の提案が採用され、今年4月、キャンプ場としてオープンした。
かつての校庭にはテントが立ち並び、夜は家族連れらがたき火を囲んだ。プールの脇にはサウナがあり、傍らの川では水遊びが楽しめる。
市は「他の地域からお客さんが来てくれ、地域が活性化する」(都市整備課)と期待。約3千万円かけてトイレの改修や浄化槽の設置をし、無償で貸与している。この会社の担当者は「学びの場だった校舎をいかしたコンテンツにも取り組みたい」と話す。
市内のほかの廃校も、別の事業者が宿泊施設として整備中で、今年度中に開業予定だ。「山間部で近くに川があるなど、人を呼びやすい立地を求めていた業者のニーズに合った。廃校の活用には環境や地域性が重要」と話す。
鹿児島県鹿屋市で、13年に閉校した小学校を利用して18年にオープンした宿泊施設「ユクサおおすみ海の学校」は今年3月、サウナやカフェテラスを新設した。
コロナ禍もあり、客層など想定通りにいかないことも多く、様々な手を打ち続けているという。「廃校は商売が難しい過疎地にある。廃校活用だけが目的になると失敗する」と川畠康文代表。今年、廃校を利用した県内の3施設とともに、課題を考えるプロジェクトを始めた。「運営のリアルを知って、活用できる施設の取捨選択を考えてほしい」
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