随意契約の備蓄米“来月以降も小売業者の販売認める”小泉農相

Q. 随意契約の備蓄米の販売期限はなぜ延長されたのか?
A. 主な原因として国からの備蓄米の引き渡しが遅れたことが挙げられます。
高騰していたコメの価格を抑えようと、農林水産省はことし5月以降、随意契約での備蓄米の売り渡しを始めました。
これまでに32万トン分の契約を結びましたが、引き渡しの遅れなどを理由にキャンセルされた4万トンを除いて、全体の3割余りにあたる10万トンがまだ出荷できていないということです。
出荷できていない分は、契約した業者にキャンセルするかどうか確認した上で、希望する場合には出荷を続け、引き取りから1か月以内の販売を求めることを決めました。
また、これまでのコメの価格の調査などで備蓄米の放出によって産地と品種を限定した「銘柄米」の価格が大きく下がったとは言えないことも、判断を後押ししたとしています。
Q. なぜ引き渡しが遅れたのか?
A. さまざまな要因がありますが、国の見通しに甘さがあったことは否めません。
備蓄米の保管倉庫は、害虫やカビを防ぎながらコメの品質を一定に保つため、温度や湿度の管理が徹底されています。
このため、コメを出し入れするスペースも限定されていて、たくさんのコメを一度に出すことができません。
また、保管倉庫がある場所は防犯などの理由で非公開ですが、コメどころが多い東日本に比較的多く設置され、西日本側への引き渡しには時間がかかるケースが多かったということです。
さらに、「メッシュチェック」と呼ばれる品質確認や異物混入を検査できる施設が限られていることなども要因として指摘されていますが、詳細な検証はこれからです。
農林水産省は今後、業界関係者や有識者による検討会を新たに設置し、この先の備蓄米の放出のあり方などを議論していくことにしています。

Q. 備蓄米の販売期限が延長されたことで、割安なコメも今後しばらくは売り場に並びそうだが、コメの価格全体としてはどうなりそうか?
A. 全国のスーパーで8月10日までの1週間に販売されたコメの平均価格は、5キロあたり税込みで3737円と、前の週より195円値上がりしました。
農林水産省は、備蓄米より割高な新米の販売が始まった影響が出ている可能性があるとしていて、新米の出荷が今後さらに増えることを考えると、備蓄米の販売の延長がコメ全体の価格に与える影響は限定的かもしれません。
ことしはコメの増産が見込まれていますが、この夏の猛暑や水不足が収穫量や歩留まりにどんな影響を与えるかはまだ不透明です。
また、仮にコメの価格が高止まりした場合は、消費者のコメ離れによる需要の減少や外国産のコメの輸入がさらに増える可能性もあります。
消費者としては、おいしいコメを手ごろな価格で買えるのが望ましいですが、生産者と消費者がともに納得できる価格はいくらなのか、議論が続く見通しです。
専門家「販売延長は現実的」

コメの流通に詳しい流通経済研究所の折笠俊輔 主席研究員は、随意契約による備蓄米の販売が9月以降も認められるようになったことについて、「現実的だと思う。新米の価格がかなり高くなることが見込まれている中で、国民に安いコメの選択肢を提供するということだろう。非常に高い価格でJAがコメを買い取ることが見込まれているので、米価が安くなる心配を生産者にかけなくてすむ」と話しています。
そのうえで、「政府としては、頑張って平均の販売価格を5キロ3000円台におさめようとしている中で、いま新米が4000円を超えそうな動向になっている。備蓄米の販売を継続しないとまた販売価格が4000円台に逆戻りすることが見込まれるため、このタイミングでの判断になったのではないか」と述べました。
そして、「新米の価格そのものに政府が介入するのは非常に厳しい。もう備蓄米のカードを切ってしまって残されたカードがないので、何かやるとすると、買いたくても買えない人たちに対する支援に切り替えることになると思う。一部の自治体ではやっていたが、『おこめ券』を国民に配布するような支援があるのではないか」と話していました。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。