北海道で人気のウニ丼。漁獲量低迷の影響で、近年は価格高騰が目立つ=2024年7月

 ウニの主要産地の北海道で漁獲量の低迷が深刻化している。

 2024年はむき身ベースで過去最少の484トン(速報値)まで落ち込んだが、水産関係者によると25年も引き続き低水準となる見込みだという。

 このまま庶民の手が届かない“幻の食材”になってしまうのか――。

 農林水産省の統計によると、全国でとれるウニの約6割の産地は北海道で、岩手県(約2割)、宮城県(約1割)と続く。

 ところが道水産統計によると北海道の漁獲量は、高度経済成長期の1606トン(1967年)をピークに、ほぼ右肩下がりで減少。24年にはピーク時の3割まで落ち込んだ。

磯焼けした海。海底には複数のウニが転がっている=東北大大学院農学研究科の青木優和教授提供

 背景には、海水温上昇やウニによる食害などが要因となり、エサとなるコンブなどの藻場が消失する「磯焼け」が指摘されている。

 今年1~12月の漁獲量見通しについても、道内の水産関係者は「まだ集計中だが、引き続き低迷しており、地元は大きなダメージを受けている。いきなりV字回復するとは考えられない」と推測する。

 一方、60年代前半にわずか300円程度だったキロ単価は、80年代に1万円台に。約10年前から再び急上昇し、24年は過去最高の2万846円と、価格はうなぎ登りだ。

 磯焼けやウニに詳しい東北大大学院農学研究科の青木優和教授(沿岸生態学)は「長期展望すると、日本の食卓やすし屋からウニが消えることは考えられる」と指摘。一部地域では身入りの悪いウニをダイバーが駆除することで藻場再生に成功しているが、磯焼けには温暖化も影響しており、「このまま行くとウニはとれなくなる」という。

 そのメカニズムとして、高水温に弱いコンブ類の性質や、水温上昇が招く海水の貧栄養化、アイゴやメジナなど海藻を食べる南方の魚の北上を挙げ、「海上を見れば今も昔も変わらないが、海中では猛烈で劇的な変化が起きている。そのことを私たちは自覚しないといけない」と警鐘を鳴らす。【伊藤遥】

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