 
      京都市営地下鉄の各駅を巡る「駅名はんこラリー」が人気を集めている。烏丸線と東西線の全31駅にスタンプを用意して10月1日に始めたところ、1週間たたずに台紙1万部がなくなり、さらに3万部を増刷した。はんこを一定数集めた人に贈る記念品も払底して納品待ちで、市交通局のアイデアマンと知られる北村信幸局長(62)も予想しなかったヒット企画となっている。
府内31軒のはんこ店でつくる「府印章業協同組合」とのコラボレーション。連携のきっかけは、市交通局が2022年から烏丸線に順次投入している新型車両の一角を、京都の伝統産業品の展示コーナーにしていること。6番目に新造する車両で「京印章」を紹介してほしいと組合に打診したところ、理事長をはじめ職人26人が手分けし、それぞれが工夫を凝らした「駅名はんこ」が誕生した。
 
      全31駅32個(烏丸御池駅は2個)のはんこは、24年7月に運行を始めた車両で展示デビュー。副理事長の河合良彦さん(48)によると、「たくさん走っている地下鉄の1両でしか見られないので、実はあまり話題にはならなかった」ものの、「かっこいい」と感嘆したのが北村局長だった。
丸みを帯びた書体から、象形文字のような品格ある書体まで趣が一つ一つ異なり、「二条城前」にはお城、「六地蔵」にはお地蔵様のイラストが彫り込まれるなど見飽きない。「無機質に思っていた地下鉄の駅が個性豊かに見えてきた。利用者にも愛着を持ってもらえる使い方がもっとあるんじゃないか」。昭和初期に国鉄から広まったとされる、いわゆる「駅スタンプ」は市営地下鉄にはない。北村局長が職員に「はんこ活用」を提案し、組合に印影からスタンプを製作してもらって「ラリー」が実現した。
河合さんも当初から「おいおいスタンプラリーもできたら」と青写真を描いていたという。大阪・関西万博でも各パビリオンを巡りながら収集できるスタンプが人気を集めた。「官庁では脱はんこが広がる中で、はんこの魅力を知ってもらう機会をいただき、ありがたい」と喜ぶ。
 
      いっぽう、市バスの混雑対策で「バス1日券」を廃止する決断から、漫画アニメフェアでバス案内係に仮装させる提案まで、繰り出したアイデアが市民や職員の不評を買うこともあった北村局長。「こんなに人気を呼ぶとは」と喜びつつ、「ラリーは『地下鉄1日券』でどうぞ」と宣伝も忘れない。
はんこを押す台紙はビンゴ形式になっており、縦横に並べてある空欄にはんこを押して1列以上集めた人に記念品を贈る。全てのはんこを押した人は375人いるという。11月30日まで。【南陽子】
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