
大阪大学や愛媛大学の研究チームは30日、脳血管と脳を隔てる関門を開く物質を見つけたと発表した。今回見つけた物質と脳疾患の治療薬を併せて投与すれば、薬を脳に安全に届けられる可能性がある。マウスを使った実験ではてんかんの治療で効果を確認した。ヒトへの投与では、致死性が高い脳腫瘍などの治療薬との併用が期待される。
大阪大の岡田欣晃准教授らが同日に記者会見を開き、研究成果を報告した。研究論文は10月中旬、科学誌「ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース」に掲載された。
脳の血管では特定のたんぱく質が互いに結合し、血管の外側を構成する細胞同士をつないでいる。この仕組みによって、脳との関門がつくられ、血液中の異物が脳内に侵入できないようになっている。一方、脳疾患の治療薬の開発では、関門の存在が薬を脳に届ける上での課題になっている。
研究チームは関門を作る特定のたんぱく質にくっついて、関門を開く低分子化合物「CL5B」を突き止めた。9600個の物質を網羅的に調べて特定した。
脳の関門を開く物質はCL5Bのほかにも見つかっている。ただ、数時間〜数日にわたって効果を発揮するため、薬による副作用が起きやすい欠点がある。CL5Bの場合、関門が開く時間は30分以内に収まり、薬をより安全に脳に届けられる可能性がある。
てんかんの病態を示すマウスにCL5Bと薬を併せて投与し、薬の効果が上がるのか調べた。薬のみよりCL5Bと一緒に投与した方が、てんかんの発作を抑えられた。
ヒトへの投与について岡田准教授は「まずは脳の関門を開くリスクがあっても、治療メリットがある脳腫瘍などで活用できる」と話した。将来的にアルツハイマー病やパーキンソン病などでの治療にいかせる可能性も述べた。
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