「天空の城」とも呼ばれる岐阜県中津川市の苗木城跡周辺で、主に秋から冬にかけて現れる雲海をAI(人工知能)で予測する取り組みが始まった。築城500年を迎える来年の試験運用を目指し、将来は雲海ツアーの実施など観光に役立てる狙いだ。
木曽川沿いに高くそびえる苗木城跡は、天守跡に設けられた展望台から見渡せる絶景が売り。また、天守跡そばには、自然の巨岩を生かした石垣が特徴の大矢倉跡があり、草木に覆われた様子が「岐阜のマチュピチュ」とも称される。
この苗木城跡周辺に雲海が出ることは知られているが、遭遇できるかは「運次第」(市観光課)だった。そのなかで、雲海のAI予報に取り組んでいる岡山理科大学(岡山市)の大橋唯太教授の存在を知り、市が依頼することになった。
大橋教授は気象学が専門で、霧の研究に長年携わってきた。観光客の「雲海が見られなくて残念」といった声を聞いたのをきっかけにAI予報の研究を始め、これまで岡山県の備中松山城や広島県の三次(みよし)盆地での予報を実現してきた。
前日で「的中率8割」
雲海予報は、気象庁から提供される気象データと実際に現地で雲海が出現したかどうかをAIに学習させ、翌朝以降の発生確率を予測する仕組み。過去2年分のデータを元にした備中松山城での予報精度は前日で的中率8割以上、7日前で6割前後だという。
大橋教授の予報の特徴は「地域特化型ハンドメイド」で、地域ごとの地形や気象に応じてプログラムを作る。苗木城跡では、天守跡に設置したカメラで10月中旬からデータの取得を始めた。来年10月に試験運用を始め、その後、データを追加して予報の精度を高め、再来年10月の本格運用を目指している。市では予報を元に、旅行会社や宿泊施設と連携した雲海ツアーの実施も検討するという。
大橋教授は、偶然にも中津川市の苗木地区出身で、「ふるさとに何か貢献したいと思っていた。築城500年を前に依頼を受け運命的なものを感じた」と話す。
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