運動と一口に言ってもさまざまな種類がある Drazen Zigic-shutterstock

<糖尿病はもちろん、肥満を予防するにも運動は効果的だが>

ランニングはカロリー消費に効果的だ。しかし、糖尿病や肥満の予防という観点では、別の種類の運動のほうが優れている可能性がある。

バージニア工科大学の運動医学研究者のジェン・ヤンを中心とした研究チームは、持久運動(ランニングなど)と抵抗運動(ウェイトリフティングなど)が、肥満や糖尿病の研究で一般的に用いられている、高脂肪食を与えられたマウスにどのような影響を及ぼすかを調べた。


結果、研究チームは、ランニングとウェイトリフティングのどちらも、血中の余分な糖分を除去する助けになることを発見した。

しかし、ウェイトリフティングのほうが、体脂肪の減少、血糖値の改善、インスリン抵抗性の低下において優れていた。これらはいずれも、糖尿病の予防および管理にとって重要だ。

「この発見は、さまざまな理由から持久運動に取り組めない人々にとっても朗報である」とヤンは述べた。「ウェイトトレーニングには、糖尿病に対する効果が同等、あるいはそれ以上にあるのだ」

英ランカシャー大学でスポーツ医学の上級講師を務めるスチュアート・ヘスケス医師は本誌に対し、ウェイトトレーニングでは、ランニングやサイクリングなどの運動ではあまり使われない、大きく速い動きの筋肉(速筋)が鍛えられると語った。

ヘスケスは、「こうした筋線維を鍛えることで筋肉量が増え、安静時のグルコース取り込み能力が向上する。血糖の『貯蔵スペース』が増えるということだ」と述べた。

さらに、「ウェイトトレーニングは独自の分子シグナルを活性化させる」とヘスケスは続けた。例として、細胞の成長と生存を制御するmTORタンパク質や、筋タンパク質合成を促進し、体脂肪の変化とは無関係にインスリン感受性を改善するカルシウム経路を挙げた。

【参考文献】

Shute, R. J., Montalvo, R. N., Shen, W., Guan, Y., Yu, Q., Zhang, M., & Yan, Z. (2025). Weightlifting outperforms voluntary wheel running for improving adiposity and insulin sensitivity in obese mice. Journal of Sport and Health Science.

<どちらも効果はあるが>

研究チームは、まったく新しい「ウェイトリフティング」マウスを作り出した。

この実験では、「ウェイトリフティング」マウスは餌にたどり着くために重り付きのフタを持ち上げなければならないケージで生活した。このフタは時間の経過とともに重くなっていき、人間の筋力トレーニングで負荷を徐々に増やすのと同じ仕組みになっていた。


一方、「ランナー」グループのマウスには、持久運動を模倣するための回し車が与えられた。

上記以外のマウスたちは運動をさせずに過ごさせた。

8週間にわたり、研究者たちはマウスの体重、脂肪量、心臓と筋肉の健康状態、血糖コントロールを追跡した。また、筋肉組織が分子的にどのように反応するかについても調査を行った。

結果について、ヤンは「ランニングとウェイトリフティングはいずれも腹部および皮下の脂肪を減少させ、血糖の維持を改善し、骨格筋におけるインスリンシグナルの働きを高めた」と述べた。

「重要なのは、健康上の効果において、ウェイトリフティングのほうがランニングを上回ったという点だ」

運動だけでは不十分...必要なことは?

英ティーズサイド大学でスポーツ・運動学の上級講師を務めるニコラス・バーガー博士は、今回の研究結果はおおむね正しいと考えられると本誌に語った。

「ただし、注意点もある」とバーガーは指摘する。「インスリン感受性を高め、内臓脂肪を減らす分子経路は、マウスにも人間にも共通して備わっている。何十年にもわたる人間の臨床試験からも、持久運動と抵抗運動のどちらもが2型糖尿病の予防や管理に効果的であることは示されている」


バーガーはまた、肥満や代謝の健康は身体内の現象だけでは決まらず、生活習慣、感情、社会的影響といった要因も関係しているため、それを実験用マウスに再現することは不可能だと注意を促した。

「定期的な抵抗運動を通じて筋肉をつけ、それを維持することは、加齢とともに特に重要になる。筋肉量が多いと血糖の調整がしやすくなり、身体の動きも保たれ、長期的な代謝リスクも減るからだ」とバーガーは語る。

「今回の結果は確かに有望ではある。しかし、現実の世界で成果を出すには、生物学的な変化だけでなく、長期的な生活習慣の改善と運動の継続が必要だ」


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