教室=斎藤文太郎撮影

 埼玉県上尾市の市立中学校で2022年、女子生徒が男子生徒からいじめを受け不登校になった問題で、再調査委員会がまとめた報告書を市が公表した。報告書は、問題発覚時に学校が市教委に提出した「いじめ重大事態調査報告書」に記載されていた調査組織が実際には存在せず、学校長が事実と異なる記載をした経緯などを問題視した。女子生徒側は「(学校作成の報告書は)偽造文書だ」などと批判している。【鷲頭彰子】

 報告書は10月27日、畠山稔市長に提出された。市長は同月30日、市教委に対して再発防止策の確実な実施を求めた。

 再調査委の報告書などによると、女子生徒は中2だった21年の2学期以降、男子生徒から腹を殴られるなどの被害を受けた。また、下校途中に後をつけられたり、携帯電話にわいせつなメッセージを送り付けられたりされた。中3になった22年5月には、下校時に4名の生徒が一緒になった際、男子生徒がそのうちの1人の手を取り女子生徒を殴らせ、「集団下校は殴り放題だ」などと言った。

埼玉県上尾市

 女子生徒は恐怖心から登校できなくなり、その後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。問題発覚後、男子生徒は事実を認め、登校を自粛。8月の夏休み明け、女子生徒は徐々に保健室登校ができるようになっていたが、10月に男子生徒が登校を再開した後、再び登校できなくなった。

市が24年2月に再調査委設置

 22年11月に調査を始めた第三者委員会は23年7月、いじめが不登校の原因と認定する報告書をまとめた。これに対し、「調査内容に多数の不備がある」とする請願が市議会に出され、議会で採択。24年2月に市が再調査委を設置していた。

 再調査委の調べなどによると、22年7月、女子生徒側が上尾警察署に相談に行った後、学校は本格的な調査を進めることになる「いじめ重大事態」だと認定した。

 しかし、学校が22年10月に作成した調査報告書では、8月末にスクールカウンセラーや教員で構成する学校内の調査委を設置したことになっているが、実際には存在せず、スクールカウンセラーが「いじめ重大事態」に認定されたことを知ったのは9月だった。

 再調査委の報告書は、学校作成の調査報告書は校長が、校内の会議等を経ることなく「主体的」に作成したと断定した。

 また、男子生徒の登校を再開させた学校や市教委の判断や対応についても問題視。男子生徒と同じ空間にいることに耐えられる可能性が乏しい女子生徒に対し、安心して教育を受けられるための方策を検討し提案するという対応を取らなかった点などを「非常に悪い」と厳しく批判した。

 今回の報告書を受けた女子生徒側は、虚偽公文書作成などの法律違反があったとして当時の関係者の処分を求めた。

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