2026年度から小学校で始まる学校給食無償化について、指定都市市長会こども部会長の郡和子仙台市長が12日、文部科学省を訪れ、福田かおる政務官に早期の制度設計を求める緊急要請書を手渡した。郡氏は報道陣に対し「国の制度設計が全く見えない中で、(自治体が)何も準備に着手できない状況が続いている」と述べ、協議の遅れに苦言を呈した。
小学校の給食無償化は自民、日本維新の会、公明の3党は26年度からの実施で合意しており、高市早苗首相も10月の所信表明演説で「来年4月から実施する」と明言した。3党は11月7日に初めて実務者協議を開き、26年度からの実施を目指して制度設計を進め、11月中の合意を目指すとしている。
これに対し、指定都市市長会は緊急要請書で「新年度まで半年を切るなか、いまだ制度設計が示されていない」と危機感を示す。地方交付税ではなく交付金などの直接的な財源措置を講じるなど「自治体に超過負担が生じないよう、恒久的制度として財源全額の確保」を求めた。
また、各地域ごとの給食提供体制や食料調達コストの違いを踏まえることや、中学校の無償化の早期実現、26年度を待たずに25年度補正予算などで物価高騰対策に取り組むことなども要請した。
郡氏は要請後に報道関係者の取材に応じ、「対象児童が多い自治体では、制度設計によっては今まで構築しているシステム変更のための新たな予算も必要になってくる。各自治体の持ち出しがないよう、安定的な財源をしっかりと確保していただくように強くお願いした」と説明した。
具体的な制度設計について、給食費の全国平均を基に一律の支援金額を決めた場合は、自治体によっては負担が増えると指摘。「23年度の政府調査の平均額の場合、仙台市の持ち出しは10億円を下らず、他の政令市も同様だろう。完全給食や牛乳のみの給食、アレルギーやハラル対応など各自治体では特色のある給食を提供しており、一律いくら(の支援)ではなかなか対応しづらい」ときめ細やかな支援を求めた。
物価高についても「コメの値段もこれまでとは全く違う。無償化が始まる前も始まった後も、物価上昇分はしっかり支援してもらいたい」と言及。「一刻も早く『こういう形でやりたい』ということを示してもらい、さらにブラッシュアップしてもらう時間も必要になってくる」と強調した。【西本紗保美】
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