leonardoiheme-pixabay

<多すぎる緑は、むしろ逆効果だった...? 先行研究を覆した意外な結果について>

室内に置かれた観葉植物は、私たちのウェルビーイング(心身および社会的健康)にとってどれほど効果的なのか――。

「装飾的な自然が多すぎると、むしろメンタル面で逆効果になる可能性がある」という、意外な結果が最新の研究で明らかになった。


スタンフォード大学の研究チームは、緑や木材といった自然に関する要素を「投与量」として定量化する新たな手法を開発。これを用いて、再現されたオフィス空間で人の心理状態への影響を調べた。

その結果、窓から樹木の見える景色がある、観葉植物を少し配置した環境では、参加者の「回復感」や「帰属意識」が高まった。しかし、その植物の数が増えすぎて空間が視覚的に圧迫されることで、逆にストレスを感じる傾向が見られたという。

本研究論文の筆頭著者で土木工学者のエヴァ・ビアンキ研究員は次のように語る。

「まったく予想していない結果でした。緑と木材が空間の約60%を占める環境で、最もストレスが高まるというデータが出ました。これは先行研究とは矛盾しています」

これまでの研究結果では、「室内に自然を取り入れるとストレスが軽減する」とされてきた。しかし多くの研究は「自然の有無」だけを比較するか、被験者の主観的評価に依存していたため、厳密な比較が難しいことが指摘されていた。

「膨大な数の研究があるにもかかわらず、方法論が統一されていないために全体像の把握ができませんでした」と述べるのは、共著者で建築学者のサラ・ビリントン教授だ。

【参考文献】
Bianchi, E., & Billington, S. L. (2025). How much nature do we need? An exploration of dose-response relationships between indoor nature dose and building occupant well-being. Sustainable Cities and Society, 134.

そこで研究チームは、「室内でどれだけ自然が見えるか」を定量的に算出できるソフトウェア「Nature View Potential」を開発。コンピュータ上で立体的なオブジェクト(物体)を作成する「3Dモデリング」と組み合わせ、自然要素のレベルを変えた11種類のバーチャル会議室を設計した。

実験に参加した412人は仮想の会議室にそれぞれが割り当てられ、そこを「新しい職場」と想定して専門的な課題に取り組む設定がなされた。


研究チームはその後、参加者に難解なアナグラムや、1022から13ずつ引いて0までカウントダウンする計算など、あえてストレスを与えるタスクを課して、自然要素がそのストレス緩和につながるかどうかを検証。事前にウェルビーイングに関するアンケートも実施し、比較できるようにした。

「わざと『あなたのスコアは平均以下で、謝礼も支払われません』と伝えることで心理的な負荷を与えました」と、ビアンキ研究員が述べるようにストレスの負荷も上げられた(実際には参加者全員が実験参加に対する謝礼が支払われている)。

解析の結果、植物による「緑の投与量」が約20%の環境で、最も高いリラックス効果と帰属意識の向上が確認された。

「13平方メートルの室内に換算すると、観葉植物17鉢と、木々の見える窓がある量」であるとビアンキ研究員は語る。

「自然要素は少しだけでも効果がありますが、変化を本当に実感したければ、20%ほどまで引き上げる必要があります」と、ビリントン教授も補足する。

一方、緑や木材が60%を占める「自然要素が最も多い空間」では、かえってストレスが増加する結果になった。参加者の一部は「植物が多すぎて何も手につかない」「やる気が出ない」などと記している。

木材の天井や壁、木製家具については、単独では明確な効果が認められなかった。これは、今回使用したデジタル環境の「木のリアリティ」が十分でなかった可能性があると研究チームは補足している。

そのうえで「自然とのつながりを感じられるかどうか」がウェルビーイングにとって重要な要素だと研究チームは指摘する。


「単に自然要素を詰め込むのではなく、この空間の自然が、しっかり人の感覚と結びつくように設計しなければなりません」(ビアンキ研究員)

どの程度の自然要素が必要かは、空間の種類や、そこで求められる心理的な役割によって異なるが、「20%程度の量の緑が、帰属意識や好奇心、心理的な『逃避』、認知の一貫性とポジティブな覚醒を最大化する可能性がある」と本研究では結論づけている。

研究チームは、今回の研究成果が、住宅・学校・職場・病院といった空間設計に生かされることを期待する。

今回の実験のストレス反応が最も高かった空間が極端に自然の量が多いという点で、現実の屋内環境とは異なるとビアンキ研究員は指摘した上で、次のように強調する。

「都市化が進む現代においては、自然の『室内投与量』とウェルビーイングの関係をめぐる実証実験が今後ますます重要になります。(...)室内の緑化は、回復感や帰属意識など多くのウェルビーイング指標に有益です。しかし、ストレス面に関しては、大量の自然が逆効果になり得えるのです」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。