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<一歩ずつ難度を上げ、強さを焦らず育てる唯一の方法であり、自分のものに変えていく道筋について>
日本でも定着した「自重トレーニング」は、自らの体重を利用することで体に無理がなく、本当の強さが身に付く筋トレの王道。
その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「CHAPTER2 イクスプローシブ・キャリステニクス──5つの原則──」より一部編集・抜粋。
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漸進的に難度を高めていく
最後の原則は、キャリステニクスの本質であるプログレッション(段階的に負荷を上げていく練習法)だ。前節の「少数エクササイズに集中する」にかかわってくる。
少数のエクササイズに集中するとしたら、同じ動作を繰り返しているだけでは進歩は見込めない。時間の経過とともに爆発力を増やしていくには、動作を少しずつ難しいバリエーションに変えていく必要がある。そうでなければ、自分がましになっているかどうか確かめようがない。
動作を漸進的に高度化するにはどうしたらいいか? PART 2で具体的にお教えするが、ここでは後方回転を例に説明したい。
後ろに向かって爆発的に回転する技術を極めるとしたら、ゴールはバックフリップになる。地にしっかりと足をつけて立ち、跳び上がって、後方に向かって360度回転し、最初に立っていた場所に着地する。動作中、どちらの手も地に触れてはならない。これが本物のバックフリップだ。
太っていてもバックフリップはマスターできるだろうか? そう問われたら、ほとんどの人が「無理だね」と答えるだろう。ある意味、それは正しい──バックフリップを「ひと口」でやろうとしてもできるわけがない。
しかし、バックフリップという動作を分解し、簡単な技術からより困難な技術へと移っていく段階的なチェーンにすれば、太っていてもこの動作をマスターできる可能性が出てくる。
実際そうすることで、わたしもバックフリップに向かない体をしているアスリートたちを指導し、バックフリップができるようにしてきた。
プログレッションの本質がここにある。プログレッションはどこまでも細分化できる。イクスプローシブ6で紹介する各ステップも3段階になっている。ステップそのものと、プログレッションおよびリグレッションだ。
プログレッションは、各ステップのバリエーションで、より難しいバージョンへの橋渡しになるエクササイズだ。一方、そのステップが難しすぎたときは、ちょっと簡単なバリエーションであるリグレッションにステップダウンする。
キャリステニクス初心者がバックフリップに取り組む場合は、ビッグ6のブリッジから始めてもらう。脊柱、肩、四肢に、筋力と可動性をつけるためだ。基本的な可動性と筋力が身についたら、バックフリップへと続くプログレッションに踏み込む準備が整う。
最初は「リアショルダーロール」で肩慣らしする。これができない人がいるだろうか?
■【写真】リアショルダーロール を見る
次に、より高度なバリエーション──手を使っての回転動作──に移る。神経系、脊柱、関節が後方回転に慣れたら、ブリッジをかけた体勢から後方回転する「ブリッジキックオーバー」に進む。
■【写真】ブリッジキックオーバー を見る
ブリッジキックオーバーが簡単にできるようになったら、次は、モンキーフリップ(マカコ)だ。モンキーフリップにはいくつかステップがある。
最後のステップに達すると、手を使って後方宙返りする「バックハンドスプリング」にトライする準備が整う。
■【写真】バックハンドスプリング を見る
バックハンドスプリングをクリアした後にもステップは続くが、このように少しずつステップアップしていくと、いつしか「あの」バックフリップができるようになっている。
不可能に思えるほかの事項を克服するときと同じように、ステップ・バイ・ステップで絶え間なく進歩していけば、いつかは目的地にたどり着く。ただし、あるステップができるようになったからといって、すぐに次へと進んではいけない。
プログレッションの核心は、それぞれのステップにどれだけ愛を注ぐかにある──ステップを習得した後も、そのステップから搾しぼれるだけミルクを搾る。
単に高みを目指してプログレッションを駆け上っても、その先は失望へとつながっていく。納得がいくまで各ステップを繰り返す。時間をかけてそのステップに親しむことが、「完璧な」瞬発力を備えたアスリートをつくることになる。
ポール・ウェイド(PAUL "COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田 雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
リアショルダーロール

ブリッジキックオーバー

バックハンドスプリング

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