息子のいじめ被害を訴える母親=横浜市中区で2025年10月6日午後7時26分、矢野大輝撮影

 横浜市立小学校でいじめを受けたとして、長期の不登校となっている児童の母親から、毎日新聞の情報提供フォーム「つながる毎日新聞」に不安の声が寄せられた。「いじめ重大事態」と認定され、学校主体で調査をすることになったが「身内調査に当たり公平性が損なわれる」と訴える。取材を進めると、自治体によって異なる対応が見えてきた。【矢野大輝】

 母親によると、2024年1~6月ごろ、特別支援学級に通う低学年の息子が、教職員がいない時間帯に校舎内で同級生らから、ズボンを下ろされパンツ越しに陰部を触られたり、カッターのやいばを向けられたりした。息子は「重度ストレス障害」と診断され、現在まで不登校が続いている。25年3月に市教育委員会から不登校の原因がいじめと疑われる「いじめ重大事態」に認定された。

 母親は手厚い支援があるはずの環境で被害にあったことなどから学校に不信感を募らせ、いじめ調査はメンバー全員が第三者で構成される組織にしてほしいと求めている。だが市教委からは複数の学校関係者に加え、弁護士1人を加えた「学校主体」で実施することを打診された。メンバーの追加も検討されているが、母親は納得がいかないという。

 「信頼していた場所でいじめに遭い、家族の生活も変わってしまった。二度とこのようなことが起こらないよう、第三者委員会が公平公正に調査してほしい」と訴える。

 文部科学省のガイドラインでは、重大事態の調査は学校か教育委員会などの設置者が実施すると規定している。不登校に関する重大事態に関しては、学校への復帰や学びの継続を優先するため、原則として学校主体で調査すると定めている。

 一方、学校の対応に課題があり、被害者側との間に不信感が生じた場合は、調査組織に複数の第三者を加えるなどし、「調査結果の信頼性を高める」ことを求めている。同省児童生徒課の担当者は「個別のケースに応じて、丁寧な対応が求められる」と話した。

 横浜市では、20年に市立中2年の女子生徒がいじめを苦に自殺し、学校側の対応の後れなどが問題視された。これを受けて今年5月に改定された「市いじめ防止基本方針」では、調査と支援を速やかに行う観点から重大事態の調査は原則、学校主体で行うことが明記された。

 市教委は個別のケースは回答しないとした上で、担当者は「学校主体であっても公正・公平性を担保できるよう構成メンバーなどにも最大限配慮している。生徒が安心して学校生活に戻れるよう対応に当たっていく」と話す。

 ただ自治体によって対応は異なる。大阪市は保護者の不信感や調査の公平性などを理由に、すべての重大事態を部外者でつくる第三者委員会が調査しているという。費用はかかるが、市教委の担当者は「第三者委員会の調査は信頼を得やすいのではないかと思う。今後も同様の運用のまま継続していきたい」と話した。

 川崎市は02年、いじめ事案などの調査や救済を求められる第三者機関「市人権オンブズパーソン」を設置。条例に基づき、学校や市教委はオンブズに協力するよう努めなければならない。

 学校側も文科省のマニュアルに沿って重大事態の調査をしているが、オンブズには24年度に15件のいじめ相談が寄せられた。学校に相談しても納得がいかなかったり、第三者の立場で救済を求めたりするケースもあるという。担当者は「独自の立場で調査する信頼感もあると思う。今後も窓口の一つになりたい」と話した。

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