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<限界を突き破る鍵は、見落とされがちな「手」と「前腕」にあった...現代的なやり方は忘れろ!>
日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「2章 鋼のような手と前腕」より一部編集・抜粋。
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極限の筋力をつくる2つの技術
手と前腕を鍛える。それは、二次的な筋力トレーニングと見なされやすい。プロを含めたボディビルダーの多くも、前腕に限定してトレーニングすることがあまりない。
手や前腕が無視されやすいのは、ダンベルロウやリフティング、カールといったエクササイズをやっていれば、それらに二次的な負荷がかかると考えるからだ。
確かに、重量があるバーを握ってエクササイズすれば、手や前腕が十分なトレーニングを受けているように見える。
だが、わたしはその考えには賛同できない。エンジニアは、そのマシンがどれほどパワフルか──どれだけ動くか──を知りたい時、もっとも強いパーツではなく、もっとも弱いパーツを見ろと言う。
どんなシステムでも、たとえそれが単純なチェーンであっても、もっとも弱い連結部分がそのチェーン全体の強さを決める。同じことが人体にも当てはまる。
残念ながら、今の男たちの手は弱く、当人が持つユニットとしての体の強さを手が台無しにしている。どこのジムに行っても、バーベルを挙げる時の助けにするため、リストストラップとフックを使う男たちを見かける。「もっと」挙げられるようになるからだ、と彼らは言うが、それは違う。
確かに腕はその重量を挙げている。しかし、手にはその重量を挙げる力がない。つまり、実際には挙げていない。肉体的な能力を解き放つのにストラップやフックがいつも必要だとしたら、それはおかしな話になる。
ニセモノの習慣をつくるし、強さだって見せかけだ。ジムの中ではこのごまかしが通用するが、現実世界では? 急な手仕事をやることになった時や、非常時に重いものを動かすことになった時、どうする? リストストラップやフックを持ち歩くわけにはいかないだろう?
ストロングマンでなくても、数世代前の男たちは今の男たちよりはるかに強い手を持っていた。重さがある物体を油圧機械で吊り上げるようになる前は、袖をたくし上げた男たちが油圧機械の代わりをしていた。
鉱山や鋳物工場、農場で長時間働く男たちは、強力な腱を備えたパワフルな前腕と、その先に分厚くてタコだらけの手を持っていた。それは健康で便利な手だった。

その時代の男たちの手には、ストラップやフックは必要ない。そこから百数十年しか経っていないのに、今の平均的な男たちといえば、キーボードを叩く時かビールの栓を抜く時くらいしか手を使わないようになっている。
昔の強い手はとても役立つ。瓶のフタを開けることから、ねじ廻しできつく締まったねじを外すことまでに、強い手が必要になる。
ウエイトを挙げるアスリートにとっても手は不可欠だ。バーベルやダンベルを持つのは手だ。デッドリフトやバーベル・ハック・スクワットなどの脚のエクササイズでさえ、重量があるバーを手で持つ。
同じ原則がキャリステニクスにも当てはまる。体重を支える強力な手がなければプルアップはできない。これは片腕で練習するステップに入ると、痛切に感じることになる。
強い指と手のひらがなければ逆立ちはできない。指先プッシュアップのような高度な技術でも同じだ。手が弱い体操選手はいない。手が弱ければリングやパラレルバーを使って印象的な離れ業を演じるどころか、子どもたちに基本的な動作を教えることすらできないだろう。
レスラーや武道家も、相手をつかむ時にパワフルな手を必要とする。とてつもない強さや運動能力があっても、手が弱いと、事実上すべての動作が制限されることになる。
現代的なやり方? 忘れろ。
ジムにいるアスリートの誰もが、パワフルな手と前腕を欲しがる。最近は特にそうだ。近頃推奨されているハンドエクササイズを見れば理由がわかる。
ジムでのハンドエクササイズといえばリストカールとリバースカールが二大トレーニング法になっている。そして、リストカールをやる時は軽いウエイトしか使わない。
前腕を鍛えるという意味ではナンセンスだが、手首を捻挫しにくい利点がある。リバースカールは、主に肘関節のところで前腕をトレーニングする。レバレッジ的な理由から、こちらも軽いウエイトを使う風潮になっている。
ボディビルダーは通常、実際にカールできる重量のおよそ半分でしかリバースカールをやらない。これではアナボリックステロイドを大量に摂取しない限り、筋力と筋量を前腕に加えることは無理だろう。
前腕を正しく鍛える技術を知る人は少ない。前腕は(首を除く)他の筋肉群よりも頻繁に見られる部位なのだが、見せる筋肉を求めるボディビルダーがその正しいトレーニング法を知らないことは皮肉な話だと言える。
タトゥーがもっとも彫られるのも前腕だが、それは人目につきやすいからだ。巨大な前腕は見る者を威圧する。身体的優位性を誇示できることから、前腕を集中的にトレーニングする囚人も多い。
ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
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