文部科学省が特別支援学校(特支)の卒業者数を除外した18歳人口で大学進学率を算出していた問題で、同様の算出方法が遅くとも1972年には導入されていた可能性が高いことが毎日新聞の調査で判明した。
これまで文科省は99年には不適切な算出が始まったとの認識を示していたが、半世紀以上前までさかのぼることになった。
旧文部省の施策などを取りまとめた72年発行の「学制百年史」に記載された大学進学率も、特支(当時の盲・ろう・養護学校)卒業者を除外して算出していた。
学制百年史は著作権を旧文部省が所有し、帝国地方行政学会(現ぎょうせい)が発行。高等教育の普及状況を紹介するページで、大学進学率について「71年度における大学および短期大学の入学者の同一年齢層に占める比率は26・8%に達した」との記載がある。
この数値は「大学・短期大学入学者」を「3年前の中学卒業者」で割って算出されている。
学校基本調査によると、68年度の「中学卒業者」は184万6787人で、特支中学部卒業者は4738人。特支を分母から除外して計算すると百年史記載の26・8%になり、特支を含むと0・1ポイント下がって26・7%となる。
学制百年史には、障害のある児童生徒の教育に関して「何といっても少数例外者でしかない障害児たち」という表現もあった。差別的と読み取れ、障害児が軽視された時代背景が算出方法に影響した可能性もある。
92年発行の「学制百二十年史」にも大学進学率について「大学学部入学者数を3年前の中学校卒業者数で除した(割った)比率」との定義が記載され、特支の卒業者を含まない数値で進学率が算出されていた。
特支卒業者を除外した大学進学率は99年度の学校基本調査報告書で初めて登場。54年度分までさかのぼって掲載されている。
99年に旧文部省幹部だった元職員は毎日新聞の取材に対し「99年以前から同様の算出方法が続いており、前例踏襲した」と証言した。
文科省は54~2024年度の71年間に除外された特支卒業者の総数は約46万人いるとし、18歳人口に特支卒業者を含む形で過去にさかのぼって再集計している。また、18歳人口のほかにも複数の調査や統計で特支の児童生徒が対象になっていないケースがあることも判明した。【斎藤文太郎】
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