高額療養費制度の見直しを巡り、限度額引き上げ撤回を求める署名と共に思いを語る水戸部ゆうこさん(右から2人目)=東京都千代田区で2025年12月23日、宇多川はるか撮影

 政府が示した、高額な医療費の患者負担を抑える「高額療養費制度」の見直し案に対し、全国がん患者団体連合会(全がん連)と日本難病・疾病団体協議会(JPA)は24日、連名で声明文を出した。患者からは、「治療を諦める人が出るのでは」と懸念する声も上がっている。

 見直し案は、長期療養者の負担を軽減する「多数回該当」の負担上限は据え置いた。月ごとの上限額は、昨年末に取りまとめられた当初案の引き上げ幅に比べ抑制されたが、月ごとの上限額が最大約38%引き上げられる人もいる内容だ。70歳以上の「外来特例」の上限額も引き上げる。

 声明文では、年間上限額を新たに設定することや、多数回該当の上限額が原則据え置かれることを評価する一方、「月ごとの限度額については十分に抑制されていない」と指摘。患者の治療断念や生活破綻につながらないよう、更なる抑制を検討するよう求めた。

 がん患者らの集う場を開く活動を続けてきた水戸部ゆうこさん(51)は、高額療養費制度に家計が助けられてきた一人だ。2018年にリンパ節と肺にがんがみつかり、ステージ4と診断。約7年半、抗がん剤治療が続く。「負担を抑えたとはいっても、上限額が引き上げられると、治療を諦める人も出てくるのでは」と心配する。

 高校生と中学生の2人の息子を持つ母でもある。同じように子育て世代のがん患者の親たちが心配だ。「経済的な不安が精神的な不安につながり、子どもに影響が出ないでしょうか。子どもの進学を諦める人が出てくるかもしれません」【宇多川はるか、鈴木理之】

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