愛媛大の徳岡良則助教(植物生態学)らの研究グループは、松山市郊外の山間部に赤外線センサーカメラを置いて野生動物の生態を調べた。観光名所・道後温泉から北東約4キロのかんきつ園地。50日間で計19種の動物を299回撮影できた。生物多様性の保全にも役立つ情報となりそうだが、どんな動物が多かったのか。思わぬ希少種もカメラの前にやって来た――。
研究グループは2024年2月1日から3月22日まで、松山市下伊台(しもいだい)町の愛媛県果樹研究センターの園地内4カ所に赤外線センサーカメラを置いた。うち2台は地上110~120センチの生け垣の上、2台は生け垣沿いの地上15センチに固定し、動物の体温をセンサーで検知するよう待ち受けて撮影を続けた。
カメラの設置日と撤去日は半日と換算し、計50日間で撮影できたのは写真に掲げた19種。回数では①ニホンノウサギ82回②ヒヨドリ60回③メジロ48回――が上位「御三家」。イノシシ、シロハラ(ツグミ科の鳥)、ツグミ、キジバト、タヌキも10回以上で続いた。
ニホンザルやヒヨドリ、メジロの写真では、地面に落ちたかんきつを採食する様子も。生け垣そばの草地では、愛媛県レッドデータブックで絶滅危惧2類(絶滅の危険が増大している種)に指定されているビンズイ(セキレイ科)が2回撮影された。山地の明るい林、木がまばらにある草原などで繁殖し、冬は暖地の松林に多い鳥。徳岡助教は「かんきつ園地が生物多様性の保全に資する可能性が示された」とみる。
哺乳類では、ホンドギツネを含め愛媛県内に生息する一般的な種が広く確認された。徳岡助教らの研究室は「地域の自然の歴史的変化を読み解き、資源管理に生かす」ことを目標に掲げる。園地がどのような野生動物に住みかを提供し、どのような役割を果たしているか。十分な検証に向け、愛媛県南予地域でも本格的な調査を複数年で行うことを検討している。
これらの結果は愛大社会共創学部の最新研究紀要に発表した。【松倉展人】
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