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<スピードを再定義する。5段階で考える高速動作について>
日本でも定着した「自重トレーニング」は、自らの体重を利用することで体に無理がなく、本当の強さが身に付く筋トレの王道。
その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「BONUS SECTION 1 高度なスピードトレーニング コーチウェイドの10のトリック&ハック」より一部編集・抜粋。
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本書『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』のマニュアルをここまで読めば、イクスプローシブアスリートになるための方法──パワー、機能的スピード、アジリティ能力と反射神経を優れたものにするための自重力トレーニングのやり方──がわかっているはずだ。
どんなエクササイズがあるかとか、各チェーンにおけるプログレッションやプログラミングについても理解しているだろう。
ほとんどの著者はこの辺で終わりにする。そして、次の本に移る。わたしは違う。とどまることを知らない馬鹿であり、もっと伝えたいことがある。
だから、ベッドに入る前にもう2章付け加えることにした。ボーナスのひとつ目は、銃口から発射された弾丸よりも速くなるためのヒントと戦略だ!
10あるアイデアのうちのいくつかは基本的なものだ。常識を持ち合わせたアスリートであれば、それらが、スピードを増幅するために採用すべきものであることがすぐにわかるだろう。
風変わりなものもいくつかある。好きなように選べばいい。その中に、トレーニングを助けるアイデアとか、パワーやスピードに対して精神的にどうアプローチしたらいいかがわかるヒントがひとつでもあれば、夜更かししてこれを書いた価値があったというものだ。
スピードサイクルをハックせよ!
スピードサイクルは現代的なジムにはない概念だ。だから、スパンデックスに身を包んで自転車を漕ぐホットな小狐ちゃんを口説く話題にはならない。
スピードサイクルとは、パンチから身をかわす、フリスビーをキャッチするためにジャンプする、動いているクルマを飛び越えるといった高速動作を、理論的なプロセスに分解したものだ。
スピードトレーニングを実りあるものにしたいなら、何よりもこのプロセスを理解する必要がある。それは、ほとんどのアスリートが気にも留めない5段階から成っている。
スピードサイクルのステージを見ていこう。

I. 前知覚
速い動作が求められている可能性に気づくのが最初のステージになる。たとえば、Red Wings Suck!(レッドウィングスはクズだ!)と書かれたTシャツを着てデトロイトにある大衆酒場に入ったとする。
ご存知の通り、デトロイトはレッドウィングスの本拠地だ。そのTシャツを目に留めたでかくて前歯がないホッケーファンがあなたを威嚇し始める。
ちょっとでも脳味噌があれば、それが現実化していない段階から、攻撃される可能性に気づくだろう。これが前知覚だ。
この段階には、置かれた環境に対する感覚的な認識だけでなく、今体験していることに対する、訓練によって得た、あるいは、直観的な心理プロセスも含まれている。
「前知覚」は、予測不可能な何かが起こったときには存在しないステージだ。たとえば、歩いていたら、顔めがけていきなりレンガが飛んでくるというような......そんな「環境」に置かれるのは、ひどくまれなことであり、予測しようがないことでもある。
II. 知覚スピード
これは、たとえばパンチが実際に顔めがけて飛んできていて、速く動かなければならない事態にあることを認識する段階だ。主に視覚を通して情報が入ってくるが、置かれた環境によっては他の感覚が大きな助けになることがある。
III. 認識スピード
すばやく飛んでくる拳を目がロックする。そこで、実際に何が起こっているかを脳が認識するまでに何分の1秒かの時間が必要になる。
信じられないかもしれないが、わたしたちは、その大男の手の動きにいくつかの異なる可能性を見ている。倒れかかってきている? 肩を軽く叩きたい? ハイタッチしたい? 等々もそこに含まれている。
IV. 決定スピード
今や攻撃されていることがわかった。そのため、ベストの対処法を決めなければならない。もちろんすごい速度ですべての物事が進行している。
映画『シャーロック・ホームズ』のファイトシーンでは、ロバート・ダウニーJr.がここまでのプロセスをスローモーションで見ていたが、そこまで高度にスピードサイクルを扱える人はいない。これは長い時間を要する前頭葉の決定を待ってはいられない事態だ。
かわす? それともブロックする? 逆に先制パンチをお見舞いする? どうするかは脳幹が即決することになる。
V. 動作スピード
腕を上げ、あとずさることでパンチをブロックすべきだとあなたの脳が判断する──いい決定だ。ここで残るのは、体を使って実際にそう行動することだ。動作スピードは、神経系や筋肉がどれだけ速く機能し、動作を現実化できるか? そのスピードを指す。
ステージの進み方にはさまざまな考え方があり、内容は同じでも違う用語が使われていたり、より細目化されたステージが加わったりする場合がある。あなた独自の解釈があってもいい。
この「変化表」の中でもっとも興味深いところは、速くありたいアスリートのほとんどが、ステージVに100%のトレーニング時間を費やしている点だ。
つまり、動作スピードを上げようとする。それも大切ではあるが、それだけでは見当違いになる──他の4ステージを見逃しているからだ。あなたを本当に速くするのは残りの80%だ!
どうしたらいいか? 他の4ステージをトレーニングする方法を見つけて、ワークアウトに加えるのだ。ここからのいくつかのスピード戦略は残りの4ステージに焦点を合わせ、どうすればいいかについてのアイデアを紹介するものになる。
ポール・ウェイド(PAUL "COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田 雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
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