
ウエアラブル端末を使っている人は運動を継続する可能性が高い KOSTIANTYN VOITENKO/SHUTTERSTOCK
<どんなエクササイズも半年も続かない人が50%以上。でも、文明の利器を頼れば、継続可能性は格段に上がる>
どんなトレーニングでも、一番難しいのは続けることだ。通常、エクササイズを始めた人の約半分は半年以内にやめてしまう。
だが、今年3月に学術誌に掲載された筆者らの研究では、スマートウオッチなどのウエアラブル端末を使っている人は、トレーニングに挑戦する可能性が高いだけでなく、半年以上たっても継続している可能性が、端末を使用していない人の7倍にも上ることが分かった。
この研究は、2型糖尿病と診断されて間もない成人を対象に行われた。運動は血糖値の上昇を抑えたり、心臓血管の健康を高めたりと、糖尿病を管理するカギとなる。
それなのに、2型糖尿病患者の9割が定期的に運動をするようにという助言に従っていない。なぜか。やる気になれない、どんな運動がよいのか分からない、個別的なサポートがない、というのがよく聞かれる理由だ。
そこで筆者らはこうしたハードルを乗り越える手段として、ウエアラブル端末やリモートコーチが役に立つかどうか調べることにした。
実験の参加者は、2型糖尿病と診断されて間もないイギリス人とカナダ人の成人(40〜75歳)125人。その全員が、パーソナライズされた6カ月間の運動計画(目標は週2時間半)を専門家に作ってもらった。電話またはオンラインでのサポートも受けた。
さらに参加者の半分はスマートウオッチを与えられて、心拍数などの基礎データを記録するとともに、自身のアクティビティーを追跡した。最新のデータに基づきパーソナライズされたアドバイスが表示されるアプリの使用や、人間のリモートコーチに助言を受ける体制も整えた。
6カ月で驚くべき成果
その結果は驚くべきものだった。スマートウオッチを使用した人は対照群と比べて、定期的な運動を始める可能性が10倍、半年後も活動を続けている可能性が7倍、1年後も(つまり専門家のサポートが終了した後も)活動を続ける可能性が3倍高かった。
また、実験終了時にはスマートウオッチ使用者の半分以上が、推奨される活動水準を達成していた。対照群では17%だ。どうやらウエアラブル端末は着用者をより活動的にし、それを維持する役に立つと言ってよさそうだ。
これは2型糖尿病患者に限った話ではない。例えば、積極的に体を動かす習慣がない成人(45〜75歳)に歩数計と助言を与えたところ、3カ月後には1日の歩数が対照群より約660歩多かったとの研究結果もある。
ただ、ウエアラブル端末が有用な働きをするのは、あくまで着用者が意識的に使用する場合に限られる。例えば、「健康的になる」といった漠然とした目標ではなく、1日または1週間に何をどのくらいするか決めたほうが達成感を味わいやすく、モチベーションの維持に役に立つ。
カレンダーのリマインダー機能などを使って、規則正しい習慣をつくることも重要だ。また友人やコーチに目標を知らせると、サボりたい気持ちを抑えやすくなる。
こうした工夫をしてウエアラブル端末を使えば、短期的な変化が促されるだけでなく、モチベーションや自信が高まって健康的な習慣を維持しやすくなるだろう。
Reference
Hesketh K, Low J, Andrews R, et al. Mobile Health Biometrics to Enhance Exercise and Physical Activity Adherence in Type 2 Diabetes (MOTIVATE-T2D): a decentralised feasibility randomised controlled trial delivered across the UK and Canada. BMJ Open 2025;15:e092260. DOI: 10.1136/bmjopen-2024-092260
Matthew Cocks, Reader, Exercise Physiology, Liverpool John Moores University and Katie Hesketh, Assistant Professor in Exercise Prescription, University of Birmingham
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。