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<神経を鍛えないと筋肉は育たない...筋肥大と筋力は、見えない回路でつながっている>

日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング外伝 監獄式ボディビルディング』(CEメディアハウス)の「PART 2 監獄ボディビルダーになるための十戒」より一部編集・抜粋。


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十戒の10  筋力をつけろ!

運動神経系をトレーニングすれば筋力が早くつく。そして、筋肉系をトレーニングすれば筋肉が早くつく。本章を通じてもっとも言いたかったのはそこだ。

では、筋肉をつけることを唯一のゴールにした場合、運動神経系トレーニングからは永遠に遠ざかってもいいのだろうか? それは違う。理由を説明しよう。

運動神経系と筋肉系の関係は、電気回路と電球の関係に似ている。運動神経系が電気回路で、筋肉が電球だ。

電気回路のワット数を高くすれば、電球はより明るい光を放つ。同じように、運動神経系を通る信号を多くできれば、筋肉がより激しく収縮するようになる。つまり、筋力が高まる。

ボディビルダーが鍛えるのはもっぱら筋肉系だ──彼らは、常に、電球を大きなものに変えようとしている。筋力アスリートがもっぱら鍛えるのは運動神経系だ──彼らは、電球は小さいまま、電気回路のワット数を高めようとしている。

筋肉が小さくても人間離れした筋力を発揮するアスリートがいるのは、ワット数を高くすれば、電球が小さくてもパワフルな光を放つようになるのと同じことだ。

ある視点から眺めると、運動神経系アスリートも筋肉系アスリートも同じことを望んでいる。

ここまでの比喩に従えば「より明るい光」、つまり、筋肉の作業出力量を上げることが目的になる。そのため、最大限の筋力を求めるアスリートは、筋肉も鍛えて電球を大きなものに変えようとする。

毎年開催される筋力イベント(パワーリフティング競技会など)に通っているとそれがわかる。


筋力がついてきたアスリートは、一様に筋肉も大きくなっていく。キャリアを通して彼を観察していると、重いクラスへと何段階か上がっていくだろう。筋肉が小さい頃の彼よりも、筋肉が大きくなった後の彼の方が強い筋力を発揮できるようになっている。

ボディビルダーの側から考えると、彼らはより大きな「電球」(作業出力量が大きくなる巨大な筋肉)を求めている。

筋肉が大きくなればなるほど、より重いウエイトを挙げられるようになり、筋肉により大きなストレスをかけられるようになるからだ。そのストレスに適応するため、筋量が増していく。

この進歩を停滞させないためには、体が大きくなればなるほど重いウエイトが必要になる。そして、それにはウエイトを挙げるための技術──筋力が必要になる。

言葉を変えれば、筋肉を限界まで開発したいなら運動神経系を鍛える必要が出てくるということになる。

ボディビルディングを始めて3~6か月が経ち、ある程度の筋肉がついたのに、筋成長がそこでピタッと止まった男を知らないだろうか?

そうなる理由がここにある。文字通り、筋力を鍛えずに走ったからだ。どれだけハードに筋肉を鍛えても──つまり、筋肉にどれだけストレスをかけても──筋肉を開発することの一部には筋力がかかわってくる。


その新人ボディビルダーが筋肉系トレーニングをいったん休み、そこからの3~6か月間を運動神経系トレーニングに費やしてから筋肉系トレーニングに戻れば、筋成長は再開するはずだ。

過去を生きたボディビルダーの多くは、筋力と筋量の関係を理解していた。そのため、1年のうちの3~6か月を運動神経系トレーニングに費やしていた者が多い。その期間は筋量を増やすことを忘れ、筋力をつけることに集中したものだ。

ボディビルディングをやりながら、そこに、運動神経系ワークを加える者もいた。セッションを変えてやったり、セッション中に運動神経系ワークを混ぜたりするやり方だ。

現在も、成功したボディビルダーのほとんどが、筋肥大(成長)ワークと筋力ワークの両方をやっている。彼らは、筋力トレーニングをやらないと筋肉が増えないことを理解している。

結論はシンプルだ。筋肉系トレーニングは筋肉を成長させる。しかし、運動神経系トレーニングをそこに加えない限り、筋成長は続かない。

純粋な筋力トレーニング──運動神経系を鍛えること──を定期的に行うか、普段のボディビルディング・プログラムにそれを加えれば筋量獲得が加速するだろう。

体重を使って運動神経系を鍛えるにはどうしたらいいか?

本書には、筋力をつけるためのマニュアルも用意してある。運動神経系にジャッキを突っ込み、回路を開いて通りをよくするための10のメソッド。本書の第6章『筋力を究める道を行く──体重を増やさずに強くなるための十戒』を参照してもらいたい。


ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

  『プリズナートレーニング外伝 監獄式ボディビルディング』
  
  ポール・ウエイド [著]/山田雅久 [訳]
  CEメディアハウス[刊]

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