最新の救命法では脈拍の確認も人工呼吸も無用とされる PIXEL-SHOT/SHUTTERSTOCK
<ドラマや映画でよく見る救命シーンは、いざというとき本当に役に立つのだろうか。米国の研究によると、描かれる心停止への対応の多くは、今では推奨されていない方法だ>
突然の心停止は言うまでもなく一刻を争う事態だ。だが米ピッツバーグ大学公衆衛生大学院の研究によれば、テレビドラマなどにおける心肺蘇生法(CPR)の描かれ方には問題があり、そのせいで現実の世界で誰かが心停止に陥ったときに、周囲の対応が遅れてしまう恐れがあるという。
この研究は先頃学会誌サーキュレーションで発表された。テレビ番組でバイスタンダーCPR(救急現場に居合わせた人が行うCPR)がどう描かれているかを分析した研究はこれが初めてだという。
アメリカ心臓病協会は2008年以降、周囲の人が心停止に陥った場合には口移し式人工呼吸はせずに胸骨圧迫だけを行う「ハンズオンリーCPR」を推奨している。手順はたったの2ステップ。まず電話で救急要請をし、それから胸骨圧迫を行うのだ。これでも、医療従事者が人工呼吸と共に行う蘇生法と同じくらい効果的に主要臓器に酸素を送り込むことができるという。
にもかかわらず、テレビでは今も、あまり効果的でない時代遅れのCPRが描かれることがしばしばだ。
「学生向けの救命訓練でも勘違いが散見される。学生たちに『まず最初にやることは?』と尋ねると、『脈拍の確認』だという答えが返ってくる。(今時の)バイスタンダーCPRではやっていないのに」と、同大学院のベス・ホフマン教授は言う。
ホフマンはこうも語る。「訓練を始める前のアンケートでは、多くの学生がSNSやテレビでCPRの場面を見たことがあると答えた。この2つが今回の研究のきっかけになった」

心停止の8割は自宅内
今回の研究では、08年以降のテレビ番組(ドラマなど、脚本に基づくものに限る)から、心停止やCPRなどの描写があった169話を視聴。一般の人がCPRを行ったのは54話あり、その中で正しい手順を描いていたのは30%に満たなかった。口移し式人工呼吸や脈拍の確認など、古いやり方を描いている例もそれぞれ半数近くに上った。
さらに、番組内で蘇生措置を受けた人の44%は21〜40歳の若い世代だった。だが現実の世界では、心停止を起こす人の平均年齢は62歳だ。また、テレビでは公共の場でのCPRが描かれることが非常に多いが、現実の心停止の8割は自宅で起きている。
「これでは一般の人々の認識をゆがめてしまう可能性がある」と、論文の著者の1人であるオレ・ファワレは言う。「もし視聴者が、心停止は公共の場で、若い人にしか起きないと思ってしまったら、救命訓練を自分ごとだと思えなくなるかもしれない。だがほとんどの心停止は自宅で起きているし、救命する相手はおそらく、大切な家族だ」
そこでホフマンは、クリエーターと公共衛生の専門家が協力することを提案している。いざというときに迅速かつ正確に行動できるよう、正しいCPRの知識を広めるためだ。
Reference
Fawole, O., et al. (2026) Out-of-Hospital Cardiac Arrest and Compression Only CPR on Scripted Television. Circulation: Population and Outcomes. https://doi.org/10.1161/circoutcomes.125.012657
■心肺蘇生とAEDの使い方
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