厚生労働省の専門部会は19日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った二つの再生医療製品について、条件や期限を設けた上で製造販売を早期承認することを了承した。重症心不全を対象にした「リハート」とパーキンソン病を対象にした「アムシェプリ」。近く厚労相が承認し、世界初のiPS細胞製品となる見込み。
京都大の山中伸弥教授らの研究チームが2006年、世界で初めてマウスの細胞からiPS細胞の作製に成功したことを報告してから20年。さまざまな臨床研究や治験を経て、実用化に一歩踏み出すこととなる。
リハートは重症心不全の治療で使う製品で、大阪大発ベンチャー「クオリプス」(東京都)が開発した。心臓の表面にiPS細胞からつくった心筋シートを移植する。生理活性物質のサイトカインが分泌されることで心臓に新たな血管が再生し、傷ついた組織が修復して心機能の改善が期待できるという。
20~23年、大阪大病院を中心に4施設で患者計8人に治験が実施された。移植後に全員の症状が改善し、がん化することなく安全性が確認された。
アムシェプリは住友ファーマ(大阪市)が申請したパーキンソン病治療のための製品。患者の脳にiPS細胞からつくった神経のもとになる細胞を移植する。
パーキンソン病は、神経伝達物質ドーパミンを出す脳内の神経細胞が減ることで発症する難病で、手足の震えや歩行困難などの症状が出る。国内には約29万人、世界では1000万人以上の患者がいるとされる。
18~21年に実施された京都大による治験では、有効性が評価された患者6人のうち4人に、介助が要らなくなるなど症状や運動機能の改善が認められた。移植した細胞のがん化は認められず、安全性が確認されたという。
二つの製品は、実用化に時間のかかる再生医療を早く患者に届けるための「条件・期限付き承認制度」で審査された。少数の治験症例から有効性が推定された製品を「仮免許」のように早期承認する仕組みで、期限内(原則7年以内)に有効性や安全性を示して「本承認」を取る必要がある。2製品とも7年の期限が付いた。
この制度で早期承認された製品はこれまでに六つあるが、有効性を示せず二つの製品が申請を取り下げ、四つは調査を継続中で本承認に至っていない。【中村好見、田中韻】
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