不二家の「ミルキー」。現在販売されているパッケージでは、「ペコちゃん」がさまざまな仕事に挑んでいる=梅田麻衣子撮影
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 ♪ミルキーはママの味~のキャッチコピーでおなじみの「ミルキー」は、ミルク味の白いソフトキャンディー。今年で誕生75周年を迎える国民的お菓子で、パッケージに描かれている女の子のキャラクター「ペコちゃん」もおなじみだ。「ミルキー」と「ペコちゃん」、切っても切れない関係だと思っていたけど、実は「ミルキー」の方が1年後輩だという。同時デビューじゃないのは何だか意外……。よし、理由を調べてみよう。

終戦…焼け残ったボイラーで

 まずは「ミルキー」を製造・販売している不二家(東京都文京区)の歴史をひもときたい。

 不二家は1910年、藤井林右衛門さんが横浜で創業した。外国人をメインターゲットにした洋菓子店。社名は藤井さんの名前にちなむとともに、日本のシンボル・富士山を意識した。明治・大正時代にクリスマスケーキやシュークリームなどを販売し、喫茶店も手がけるなんて、ハイカラですね。

 「誰も手をつけていない新しいものにチャレンジしたいという思いがあったようです」と不二家広報室の宮永奈津紀さんが教えてくれた。

両端をひねった包装になっており、子どもの力でも簡単に開けることができる=梅田麻衣子撮影
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 関東大震災、第二次世界大戦と、時代の波に翻弄(ほんろう)され、不二家も多くのものを失った。ようやく終戦を迎えると、焼け残った1基のボイラーを頼りに、藤井さんはいち早く沼津工場(静岡県)を再建。水あめと練乳の製造を始めた。

 これが「ミルキー」誕生につながる。「水あめと練乳を使って新しい商品ができないか」と考えた藤井さんは、暇を見つけては、自宅近くの工場にこもって新製品の開発に情熱を注いだ。2年にわたって何度も試作を繰り返し、51年に完成したのが「ミルキー」だった。練乳を50%近く使い、栄養豊富で、まろやかな味わい。これまでになかった新しい味が広く愛され、大ヒット商品になった。

 でも何で「ママの味」なんですか? 「実は最初から『ママの味』というキャッチコピーは決まっていたんです」と宮永さんは明かす。お母さんの愛情のようにやさしく、母乳の懐かしさを感じるようなお菓子を追求した結果、「ミルキー」ができたのだ。ちなみに開発当初は「ジョッキー」という名前だったそう。ミルクのイメージを表現するため変更した。「ミルキー」の方がぴったり!

 最初のパッケージは紙製で、持ち手がついており、表面に「ペコちゃん」、裏面に「ポコちゃん」が描かれている。目が動く仕組みが面白い。それに、2人とも今より何だかアダルトな雰囲気だ。

ペコちゃん」(左)と「ポコちゃん」が描かれた箱入りの「ミルキー」=梅田麻衣子撮影
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一足先に不二家の「看板娘」に

 「ペコちゃん」は「ミルキー」発売に先立つ50年、不二家の店頭に置く人形として登場した。愛嬌(あいきょう)のある顔とゆらゆらゆれる頭で一躍人気者に。ただ、紙の張り子だったため、触られすぎて傷むこともあった。修理するうち、「ペコちゃん」の顔が変わってしまうこともあったそうだ。

 ここで宮永さんから「ペコちゃんはもともと、ミルキーのキャラクターとして温められていたんです」との情報が。えっ、じゃあ、なぜ先にデビュー? 「戦後間もない時期、ペコちゃんが店頭に立っていることで、多くの人にほっこりしてほしい、頭をなでて笑顔になってほしいと考えたようなんです」。ペコちゃんが、一足先に不二家の「看板娘」になったのは、多くの人に早く笑顔を届けたいという思いがあったのか……なるほど!

舌を出さないポコちゃん、その訳は…

 男の子の「ポコちゃん」は、「ミルキー」のパッケージで初登場。「ペコちゃん」「ポコちゃん」とも、誰がデザインしたかなどは分かっていない。名前は「ペコちゃん」が子牛の愛称「べこ」を、「ポコちゃん」が幼児を表す室町時代の古語「ぼこ」を、それぞれ西洋風にアレンジしたという。「ペコ、ポコという名前だけは、戦前の一九三三、四年ごろには、社内で温められていたようです」と宮永さん。戦争の時代をはさんで、ようやくデビューできたんですね。

 仲間も増えている。95年には犬のキャラクター「ドッグ」が登場。今年1月には「ねこにゃん」「かめ吉」など動物のキャラクター5種類が加わった。「ペコちゃんポコちゃんとゆかいな仲間たち」と位置づけている。「ペコちゃん」同様、みんな舌をペロリと出していてかわいい。

 でも、何で「ポコちゃん」だけ、舌を出していないんですか? 「記録が残っていないので、分からないんです」と宮永さん、申し訳なさそう。いえいえ、「ポコちゃん」のほほえみ、何だか癒やされます。

 「ミルキー」は、現在も両サイドをひねった個包装。引っ張ると開くので、子どもでも自分で簡単に食べられる。無香料・無着色のやさしいミルクの味は守りながら、歯にくっつきにくくするなど、少しずつ改良を重ねている。包み紙をよく見ると、四つ葉のクローバーや占いなどが記されていることも。ほっとするミルクの味と、笑顔を生む細やかな配慮。「ママの味」は、大人にもやさしく寄り添ってくれる。【水津聡子】

不二家のお菓子=梅田麻衣子撮影
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メーカーと洋菓子店の「二刀流」

 小売店向けのお菓子メーカーと洋菓子店という「二刀流」の不二家。小売店向けのお菓子に本格的に参入したのは、「ミルキー」の大ヒットがきっかけだった。今では「ルック(LOOK)」「ホームパイ」「カントリーマアム」など、多くの人気商品がある。

 2020年に発売した「カントリーマアムチョコまみれ」には、チョコレートの沼から顔を出す「まみれさん」が描かれている。「実はまみれさん、不二家独自のキャラクターとしては、ペコちゃんシリーズ以来といわれているんです」と宮永さん。「ペコちゃん」と絵のタッチは違いますが、「まみれさん」もシュールで面白いです。「ホームパイチョコだらけ」「カントリーマアムシロじわーる」など、「チョコまみれワールド」は拡大中。今後も注目ですね。

 二刀流のもう一方、洋菓子店では「ミルキー」の仲間が人気を集めている。「ミルキー」と同じ花柄模様のパッケージがかわいい「ミルキークリームロール」は、柔らかいロールケーキの中にミルキークリームがたっぷり。「ペコちゃんmilkyドーナツ」などのお店もある。

 ちなみに2月28日は、語呂合わせから「不二家の日」。今年は、ミルキー75周年を記念したケーキなどが限定販売される。

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