コップの縁に前足をかけてぶら下がり、口の部分に内蔵された小型ファンから風を送り、熱すぎる飲み物を冷ましてくれる体長8センチの小さな猫型ロボット。その名は「猫舌ふーふー」(4180円、税込み)だ。
愛猫家でなくとも猫舌ならば、2(ニャン)が三つ並ぶ「猫の日」の22日に合わせ、お一ついかがだろうか?
転機は、あの商品のブーム
「かわいいロボットが『ふーふー』してくれたら、子どもが食卓に座るんじゃないか」
商品化した「ユカイ工学」が毎年社内で開いているアイデアコンペで、未就学児の子を持つ父でもある30代の男性社員がそんな提案を出した。5年前のことだ。
ユカイ工学の青木俊介代表(47)が開発秘話を明かしてくれた。
子どもは熱いものが食べられないし、落ち着きがない。食事の席に着かせるのは、親にとって一苦労だ。
金属やプラスチックなどの包装容器を製造する「東洋製缶グループホールディングス」の新規事業の担当者がこのアイデアに関心を持ち、共同開発することになった。
とはいえ、当時は充電式の小型ファンの製造コストが高く、いったんは企画がお蔵入りになった。
しかし、熱中症対策でハンディーファン(小型扇風機)が流行したことで、ファンの製造コストが低下。再び商品化に向けて動き出すこととなった。
米メディアの動画200万回再生
「猫舌ふーふー」がお披露目されたのは、昨年1月に米ラスベガスで開かれた世界最大級の電子機器の見本市だった。
「これは携帯できる小さなロボットで、生活を少し楽にしてくれます」
英語で「猫舌」に当たる言葉はないものの、米技術系メディアの記者が見本市の会場で使い方を実演した動画は、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で200万回再生された。
他にも、SNSで多くのファンを持つインフルエンサーが動画を投稿するなどして話題を呼び、昨年7月に日本国内で正式に発売された。
一定の勢いで風を出すモードに加え、まるで人が熱いものを冷ますときに息を吹きかけるように、「ふーふー」と風を出すモードが選べる。飲み物や食べ物を冷ましすぎないように、5分で自動的に停止する機能も備わっている。
「子どもが、この子と一緒にご飯を食べたがる」
「外出するときも持ち歩いている」
ユカイ工学に利用者から多くの反響が寄せられるなど、商品は子育て世代の人気を呼んだ。
今年の「猫の日」に合わせ、東京都の渋谷ロフトの猫アイテムを集めたコーナーでも販売されている。
保護猫がくれた心地よい時間
ユカイ工学が手がけたロボットの中には、猫をほうふつとさせるデザインの商品が他にもある。
「Qoobo(クーボ)」はしっぽのついたクッション型のセラピーロボットで、なでるとしっぽを振って応えてくれる。
「甘嚙みハムハム」は、ぬいぐるみのようなロボットの口に指を入れると、ペットや赤ちゃんが指をかむのと似た感覚が味わえる。
なぜ猫なのか。
青木さんは、19年から保護猫「ママ」(7歳)と暮らすようになった。
「僕自身、猫に助けられることが多いんです」
日々の暮らしのなかで「ママ」に癒やされるシーンが多いのだという。
スマホなどの電子機器の画面に漫然と見入ってしまったとき、ふとした瞬間に猫がちょっかいを出してきて、我に返る。
「猫の良いところは、人間世界のことを何も関知していないところです。私たちの職場の人間関係などを何も分かっていないからこそ、一緒にいて癒やされるのだと思います」
人工知能(AI)の高度化によって、まるで人間のようにやりとりできるロボットも登場する中、青木さんたちは、人と適度な距離を保ちつつ、自然に生活の中に入り込んでサポートしてくれるロボットを手がけることを目指す。
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「猫舌ふーふー」をはじめとするロボット開発を手掛けるユカイ工学のロボットや武蔵野美術大学の学生の課題作品が並ぶ展示イベント「AI× Partner × Robot展」が23日まで、武蔵野美術大学市ケ谷キャンパス(東京都新宿区)で開かれている。22日は休館日のため休み。入場無料。【川上珠実】
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