「窓があって囲われていて電気設備が中にある。(高速道路料金所の)技術を生かせるということで採用したみたいです」。そう語るのは、箱根登山電車の検車区で班長を務める斎藤孝知さん(51)。モニ1形は、「料金所ブース」の技術を由来に持つ事業用の貨物電車です。
製造したのは東横車輛電設(現・東急テクノシステム)。同社の前身、東横車輛工業が高速道路のブースを初めて製作したのは1967年。以降「設計から施工まで一貫して請け負う専門メーカーを目指し」(東横車輌電設50年史)態勢を強化しました。モニ1形はその技術を応用した製品として受注しました。
この車両はレールやバラスト、枕木などの運搬を目的に作られています。全長約14・7メートル、高さ約3・8メートル。幅は約2・6メートルですが、両側にレールなどの長い資材が乗せられるよう、運転台の幅は少し狭い仕様です。前から見ると確かに「料金所ブース」のように見えなくもありません。
最大勾配80パーミルの箱根登山電車。車道からアクセスが難しい場所での保線工事も多く、この車両は欠かせない存在です。広い荷台にはチェーンブロックが備えられ、重い資材を積み下ろしできます。両側の運転台後部にはそれぞれ、作業する人が乗れる数人分の長椅子が設置されています。
製造から50年たち、箱根登山電車の中でもかなり古参になってきました。駆動方式は、当初、モーターが車輪と一緒に上下しながらギアで動力を伝える「つり掛け駆動方式」でした。しかし、2017年に継ぎ手を介して動力を伝える平行カルダン駆動方式に変更。
パンタグラフも1989年にひし形から下枠交差式に、さらに2019年にシングルアームのタイプに変更されました。いずれも旅客車両との部品共通化のためだといいます。16年には防曇ガラスに更新され、22年には照明のLED化も行われました。
一方で制御方式は昔ながらの抵抗制御。車両は鋼鉄製で、外板や床板は何度も切り張り溶接して大切に使ってきました。
「整備するのに昔の技術が使え、自分の腕が試される」と斎藤さん。「古い車両は少しでも手を抜くと故障の原因になるので、手を抜かない。そういった作業を目指していきたいと思います」
料金所ブースの技術が生んだ箱根の守り神モニ1形。これからも第一線で活躍していくことでしょう。【写真・文 渡部直樹】
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