畑を照らす電球がSNS映えすると話題を呼んでいる(1月、京都市)
ライトアップされた畑で行う、夜の野菜収穫体験が人気だ。農業関連の事業を手掛ける一般社団法人BNR(京都府長岡京市)が、農業を身近に感じてもらおうと2年前に開始。光り輝く畑の写真がSNS映えすると話題になり、関西圏からを中心に予約客でにぎわう。寒さを忘れてネギやハクサイを収穫した後、テントで食べる鍋料理も格別だ。

農地や雑木林が広がる京都市西京区の郊外。暗闇の中に突然、光り輝く畑が現れる。BNRが運営する「ナイトファーム」だ。開始時刻の午後6時になると、車やタクシーで子ども連れの参加者が次々と訪れる。

BNRは約6000平方メートルの農地を借りており、約1000個の電球が畑を照らす。気温が1桁まで冷え込む中、参加者は鎌やはさみを受け取って思い思いに畑に入って収穫する。畑の横にはテントを並べて野菜たっぷりの鍋を用意し、冷え切った体を温めてもらう。

参加料金は大人6380円、小学生3300円。2000円相当の収穫した野菜を持ち帰れるのも、人気の理由だ。BNR代表理事の寺島美羽さん(24)は「ファミリーや20代の若いカップル、家族3世代で訪れる方もいるほど客層は幅広い」と話す。

自分で取ったホウレンソウをそのまま食べる参加者

奈良市と京都府向日市から親戚3人と訪れた女性は「大阪・関西万博でBNRファームの割引券をもらって知った。想像以上に楽しかった」と笑う。京都市内から訪れた家族4人は3回目の来訪。父親は「夜に収穫体験できるのが珍しい。子どもが野菜好きになってくれるのがうれしい」と話す。4歳の長男は、取れたてのホウレンソウを生のまま頰張っていた。

BNRがナイトファームを始めたのは2024年夏。寺島さんには「普段、農業に触れない人にこそ農業を体験してほしい」との思いがあった。もともと環境問題や食料問題に関心があり、大学時代に1年間休学して、有機農業を営む福島県の農業法人に住み込みで働いた経験もある。

ナイトファームを運営するBNR代表理事の寺島さん

2025年は7〜11月に開催。大人5500円で、収穫体験とピザづくりを楽しめるようにした。延べ1400人超が来場し、夏休み時期の8月は平日も予約で埋まるほど盛況だった。高速道路からのアクセスが良く、3〜4割が大阪府内から訪れたという。

そこで今シーズンからは、テントや暖房器具などを整えて冬季にも実施した。1月限定だったが、夏に訪れた客がリピーターとして多く参加するなどにぎわった。2月は休業中だが、春には近くの竹林でタケノコの収穫体験も計画している。将来的には1年を通しての開催を見据えている。

参加者は「屋外で鍋を囲むことが少ないので良い体験だ」と話す

畑を日々手入れするのはBNRの一員、岡田哲郎さん(47)だ。京都市内でカフェバーを営業していたが、2020年に友人を通して農地を借り新規就農した。ただ、野菜の収量が増えず、思うように稼ぐことが難しかった。

限界を感じていたところ、行き着いたのがナイトファームだった。農家の生活を知ってほしいと、ほぼ1日中農作業をネット配信したところ「夜の作業でヘッドライトに照らされた野菜がきれいだ」という視聴者からの反応があった。

「星空ナイトファーム」ではテントの横にアミュラポが月の巨大オブジェを置いた

今ではライトアップやお客を楽しませる仕掛けづくりに、飲食店での経験を生かしている。寺島さんも「夜というだけでわくわくするし、日中の収穫体験は他でもできる」と強調する。

企業とのコラボにも積極的だ。取材した日は「星空ナイトファーム」という限定イベントの開催日。宇宙教育などを手掛けるamulapo(アミュラポ、東京・新宿)の社員が運営に加わり、月面でゴルフができる仮想現実(VR)ゲームを用意したり畑の中に巨大な月のオブジェを設置したりした。

寺島さんは「ビジネスとしても成り立つのがナイトファーム。地域活性のロールモデルにしたい」と語り、他エリアへの展開にも意欲的だ。いつか全国でナイトファームが開かれる日が来るかもしれない。

(京都支社 足立佑太)

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