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<真の強さは、首が語る...オーラを放つ、ブルドッグのような首について>
日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「10章 ブルドッグのような首」より一部編集・抜粋。
もっとも弱い部分を防弾する
太くたくましい首は、侮りがたいオーラを放つ。目の前にいる相手がどれほど筋肉質であるか値踏みする時、監獄では、首が語る内容を読み取ろうとする。体型から推し測ると見誤るからだ。
特に箱型の体型をしていると、実際はやせていても、服の中に分厚い筋肉があるように見える。ウソをつかないのは、ブルドッグのような首だ。
インパクトがある首を持っているのが自慢の囚人は、それをアピールするため、喉や首の横にタトゥーを入れる。前腕は、季節によってはシャツやセーターの下に隠れるが、襟の上から覗く首は、年中、人目にさらされている。
この観点から考えると、首のエクササイズをトレーニングプログラムに加えるボディビルダーが少ないことには、いつも驚かされる。普通のトレーニーに至っては、当たり前のように無視する部位になっている。
首を鍛えることには、それ以上の利点がある。首は脊椎上部にある頸椎を覆っている。脊椎の中でも特に小さな椎骨のつながりでできているのが頸椎だ。
このデリケートな頸椎を守る筋肉が頑丈で健康であれば、頸椎が傷つくリスクを劇的に減らすことができる。また、首の筋肉がパワフルであれば、頭部全体のショックアブソーバーにもなる。
ボクサーが熱心に首をトレーニングするのは、脳震盪(あるいは、さらに重大な事態)から脳を保護してくれるからだ。
さらに、パンチを受けても頭の中で脳が揺れるのを防いでくれる。ボクシング番組のKOシーンの後では、解説者がよく「ガラスの顎」を話題にする。
しかし、重いパンチをくらっても笑っていられる能力は、顎が決めるものではない。実際は、強く安定した首を持っているかどうかで決まる。
監獄で首のトレーニングに時間が費やされる理由のひとつが、ここにある。不意に強烈なパンチをくらっても、即座に反撃体制に移ることができるからだ。
頸部(首)を鍛える技術も、一部のアスリート世界を除いて滅んでしまっている。そのため多くのアスリートにとって、もっとも弱い部位になっている。頸部にある筋肉を鍛える方法を教えられるパーソナルトレーナーもいない。
フィットネスライターが提案することといえば、小さなウエイトを頭につけ、レップス数が多い繰り返し運動をやれ、といった愚かな話ばかりだ。それどころか、重いウエイトを首につけるハーネス(馬具)のような器具さえある。
こういった哀れな繰り返し運動が、強力な頸部を生み出すことはない。頭の周りに重いウエイトを縛ったり垂らしたりすることは、絶対に避けなければならない行為だ。
頸部ハーネスはしつこい頭痛や首痛の原因となることで知られる、悪名高い代物だ。頸部をトレーニングするマシンのほとんどは、「鍛える」ことにばかり気をとられ、頸椎に与えるダメージを考慮していない。
健康的な頸椎をつくるのではなく、頸椎を破壊するために設計されているようにさえ見える。そんなものに近づいてはいけない。
仕事に必要な首の力
首を鍛えるにはどうしたらよいかを、わたしはエキスパートから学んでいる。もちろんボディビルダーからではなく、ボクサーですらなく、レスラーからだ。
悪い道に迷い込む前は優秀なアマチュアレスラーだったその男と出会ったのはアンゴラ(別名「ザ・ファーム」と呼ばれる最も過酷な刑務所)だ。彼と出会ったことで、レスラーほど首のトレーニングについて理解しているアスリートがいないことを知ることになった。
優れたレスラーを観察すると、花崗岩から掘り出したような肉厚で頑丈な首を持っていることがわかる。アトランタ・オリンピックのレスリング・フリースタイル100kg級で金メダリストになったカート・アングルの首回りは20インチ(約51cm)以上もあった!
1990年代後半にWWEと契約したアングルは、ハルクのような男たちと同じリングに立つことになる。ビール樽のような腕と木の幹のような太ももを持つレスラーを前にすると、小さく見える体だったが、彼ほどインパクトのある首を持つレスラーはいなかった。
そして、アマチュア時代のトレーニングでつくったその首で、ヒール(悪役)として一時代を築いていくことになる。
レスラーが首を開発するのには理由がある。接近戦になると両腕が対戦相手に取られるため、対戦相手の頭や胴部に頭をつけ、頭を第三の手として機能させる必要に迫られるからだ。
首に、腕並みの強さが求められるのだ。優れたレスラー同士が対戦すると、互いの腕をすぐに取り合って動きを遮る。そのため、対戦相手の胴部をホールドしながら投げを打つしかなくなり、投げた方の頸部と脊椎上部に負荷が直撃する。
スープレックスという技を見たことがあるなら、何を言っているかわかるだろう。
対戦相手を抱えながら、肩と首を地につけるようにして投げるのだ。相手の体重がのしかかってくるので、鉄のような頸部がない限り、こんなまねはできない。下手をすれば自分の首の骨が折れるリスクがある。
しかし、そんなことは意にも介さずに、レスラーたちは試合中に何十回もスープレックスをかける。トレーニングカリキュラムの中に頸部を鍛えるトレーニング技術があるからこそ、それができるのだ。
ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。
『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』
ポール・ウエイド [著]/山田雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
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