食べた後に急性脳症を発症する事例が相次いだキノコ「スギヒラタケ」について、毒性物質の生合成に関連する可能性のある遺伝子を見つけたと、宇都宮大などの研究チームが発表した。2004年に症例が確認されて以降、発症メカニズムは謎のままだったが、原因解明に近づくことが期待される。
研究成果は、微生物学の国際学術誌「AMBエクスプレス」に掲載された。
スギヒラタケは、スギなどの針葉樹の倒木や古株に発生するキノコ。北陸や中部、東北地方を中心に古くから食用にされてきた。だが、食べた後に急性脳症を発症する事例が04年に報告され、この年だけで腎障害を持つ患者を中心に、59人が発症、17人が死亡した。
厚生労働省研究班が原因究明を目指したが、特定できないまま解散した。症例確認から20年以上経過した今も、大学などでスギヒラタケと急性脳症の関係についての研究が続いている。
宇都宮大などのチームはこれまでの研究で、スギヒラタケに神経毒性のある物質が含まれることを突き止め、この物質を「プレウロサイベルアジリジン(PA)」と命名。今回、最新の解析装置でゲノム(全遺伝情報)を解読し、遺伝子(DNAの塩基配列の中で遺伝情報を持っている領域)を調べた。
チームによると、先行研究でカビの一種がPAの生合成に関わる酵素遺伝子を持っていることが分かっていたが、今回の研究で、同様の働きを持つ可能性のある酵素遺伝子を特定した。たんぱく質の立体構造を高精度で予測するAI(人工知能)で調べると、スギヒラタケが持つ酵素の構造は、PAの生合成に関わる酵素と似ているという。
チームの鈴木智大・同大准教授(生命情報科学)は静岡大大学院の学生時代にスギヒラタケの研究を始め、急性脳症発症メカニズムの解明を目指して研究を続けてきた。これまでの研究で、PAだけでなく、スギヒラタケに特徴的な二つのたんぱく質を特定。これらの物質の組み合わせで、脳内に障害が起こることをマウスの実験で確認している。
鈴木准教授は「今回特定した遺伝子が本当にPAの生合成に関与しているかを調べ、スギヒラタケの毒性発現メカニズムを明らかにしたい。また、『毒』は使い方次第で薬にもなる。スギヒラタケの『毒』が新薬の研究につながるか、その可能性も追究したい」と話す。【大場あい】
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