都市にすむ鳥は、本来の生息地である農村部の鳥と比べて人を警戒する度合いが低く、危険を避けようとしない傾向があるとの研究成果を、国立科学博物館の濱尾章二名誉研究員(行動生態学)が日本動物行動学会の国際学術誌「ジャーナル・オブ・エソロジー」に発表した。
同館によると、これまでも「都市部の鳥は人が近づいても逃げない」と言われることがあったが、国内で科学的に検証した事例はなかった。
今回の研究の対象は、東京都心で繁殖している7種(スズメ、ハシブトガラス、ムクドリ、キジバト、シジュウカラ、ヒヨドリ、ハクセキレイ)。人がゆっくり歩いて近づき、鳥が逃げたときの人との距離(逃避開始距離)をレーザー距離計で正確に測るという手法で警戒性を調べた。警戒性の研究では一般的な手法で、逃避開始距離が短いほど人を警戒していないと判断できる。
濱尾さんは2022年、東京23区内の緑地12カ所(人口密度1平方キロ当たり約1万6500人)と、茨城県南部の農村地帯18カ所(同約500人)で7種の逃避開始距離を調査。学習中の幼い鳥を排除するため、繁殖期の初めに相当する3月中旬~5月上旬に実施した。
近くにいる仲間や避難場所(やぶなど)までの距離などの影響を排除して解析した結果、7種全てで東京の個体のほうが逃避開始距離が短かった。スズメの場合、茨城(115羽)は平均11・1メートルで、20メートル以上離れていても逃げ始めた個体もあったのに対し、東京(82羽)は平均4・2メートルまで人が近づいてから逃げた。
また、東京23区で生息するようになってからの期間と警戒性低下の程度には相関がなかった。1970年代に定着した種も逃げなくなっていることから、濱尾さんは「何世代も経て獲得した変化ではない」とみている。
クマと人のあつれきが各地で深刻化しているが、その一因として人を恐れない個体の増加が指摘される。濱尾さんは「鳥の人に対する警戒性が都市で低下している要因の解明を目指したい。都市の鳥の研究を通じて、野生動物と人とのすみ分けに生かせる科学的知見が得られるのではないか」と話す。【大場あい】
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