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<うつ病と清涼飲料水の関係に注目が集まる中、腸内細菌「エガセラ」の関与が指摘されている>

清涼飲料水の摂取が、大うつ病性障害(MDD) につながっている可能性がある──特に女性は、より重い症状を示す傾向があることが、最新研究で明らかになった。

この一因として、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の中でもとりわけ「エガセラ(Eggerthella)」という細菌群の多さが関係している可能性があるという、ドイツの研究チームによる大規模コホート研究が発表された。


ロンドン大学キングス・カレッジの肝臓学教室のデビー・ショークロス教授と、同大学LIMBIC研究室所属のビクトリア・クロンステン博士は次のように述べる。

「今回の多施設共同臨床研究は、清涼飲料水の摂取とうつ病との間に関連性がある可能性を示しました。清涼飲料水を多く飲む女性は、うつ病と診断される確率が高く、症状も重い傾向にありました。一方で、男性ではこうした影響は見られていません」

食事がうつ病に果たす役割と、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)が主要な媒介要因となる可能性について研究チームは強調する。さらに、性差が見られたことから、性別に応じた予防策や介入法の必要性を指摘している。

糖分の多い「超加工食品」と腸内環境の関係

清涼飲料水が「超加工食品」であり、高カロリーかつ、ブドウ糖や果糖などの単糖を多く含むと研究チームは定義する。これらは小腸の吸収能力を低下させ、特定の細菌群の増殖を促す可能性があるという。

調査は、18〜65歳の大うつ病性障害(MDD)の患者405人(女性67.9%)と健康な対照群の被験者527人(女性65.5%)を対象に実施。

その結果、清涼飲料水の摂取量が1日あたり1回増えるごとに、大うつ病性障害(MDD)を発症する確率が約8%上昇することが判明した。


特に女性でこの傾向が顕著で、対象となった620人の女性のうち、清涼飲料水を多く摂取する人はうつ病を発症する確率が約17%高かった。一方で、312人の男性に有意な影響は見られなかった。

うつ症状の重症度を「BDI-I(ベック抑うつ評価尺度)」で測定したところ、女性のみに有意な関連が確認された。さらに、BMI(体格指数)を考慮しても、この傾向は変わらず、服薬の有無による差も見られなかったという。

大うつ病性障害(MDD)の症状の重い患者の場合にも、同様のパターンが認められた。

「清涼飲料水がメンタルヘルスに負の影響を与えるというエビデンスは増加している。長期的研究においても、定期的な清涼飲料水の摂取がうつ病リスクの上昇に関連している」と研究論文に記されている。

腸内多様性(α多様性)の低下

ケンブリッジ大学の統計学者であるスティーブン・バージェス教授は、本研究はあくまで観察的分析であり、因果関係を証明するものではないとして次のように述べる。

「仮に研究結果どおりであっても、清涼飲料水を飲む人のうつ病リスクは、飲まない人よりわずか8%高いに過ぎません。(...)その差は、統計的な偶然による誤差の範囲に収まる可能性があります」

研究チームも、今回のデータが自己申告に基づく症状報告である点を認めている。


そのうえで、女性の腸内細菌叢(マイクロバイオーム)を詳細に分析したところ、清涼飲料水の多量摂取が腸内の多様性(α多様性)の低下と関連していることが分かった。

バース大学のギヨーム・メリック准教授は、次のように述べる。

「本研究は、特に女性において、清涼飲料水の摂取とうつ病がしばしば同時に現れることを示すもので、腸内細菌のエガセラ属(Eggerthella)がその媒介となる可能性を示唆しています」

ただし、まだ清涼飲料水がうつ病を「引き起こす」とまでは断定できず、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の影響も4〜5%程度と限定的であり、仮説の実証にはさらなる研究が必要であるとしたうえで、次のように指摘する。

「清涼飲料水を減らすことは低いリスクで健康全般に良い影響をもたらしますが、これをうつ病の唯一の治療法とみなすことは誤りです」

因果を立証するのは困難

「食事研究で因果関係を立証することは難しいものです。うつ病そのものが甘い飲料の摂取増加を招くこともあるからです」と指摘するのは、ロンドン大学キングス・カレッジのショークロス教授とクロンステン研究員だ。

また、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の分子精神医学教室のアンドリュー・マクイリン教授も、現時点のエビデンスはそこまで強固ではないとして、慎重な見方を示す。


それでも食事と腸内環境がメンタルヘルスに影響を与えるという証拠は増えつつあるとロンドン大学キングス・カレッジのショークロス教授とクロンステン研究員は述べる。

本論文は、教育、予防策、政策の面から、清涼飲料水の消費削減を進める必要性があると提言する。


【参考文献】
Edwin Thanarajah, S., Ribeiro, A. H., Lee, J., Winter, N. R., Stein, F., Lippert, R. N., Hanssen, R., Schiweck, C., Fehse, L., Bloemendaal, M., Aichholzer, M., Bouzouina, A., Uckermark, C., Welzel, M., Repple, J., Matura, S., Meinert, S., Bang, C., Franke, A., ... Hahn, T. (2025). Soft drink consumption and depression mediated by gut microbiome alterations. JAMA Psychiatry. Advance online publication.


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