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<「自重トレーニング」の伝道者が語る「筋力×スピード」で動く能力について>

日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「CHAPTER 1 パワーアップ! そこにはスピードが欠かせない」より一部編集・抜粋。


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筋力×スピードで動く能力。それがパワーだ。

パワーという用語は、アスリートを混乱させる。筋力の同義語として誤って使われることが多いからだ。皮肉なことに、「人間発電所」と呼ばれる巨大な男たちが、小さなアスリートたちよりパワーに欠ける場合がある。

ここでいう真のパワーが単なる筋力ではないからだ。それは、筋力とスピードがブレンドされたものだ。筋力そのものではなく、筋力をどれだけ速く使えるかという時間の概念が加わったところに真のパワーがある。

筋力はパワーを必要としない。そう言ったらクレイジーに聞こえるだろう。しかし、それが真実だ。筋力のみを純粋に使うときは、スピードはゼロでもかまわない。

大破したクルマの下から這い出ようとしている子どもを助けるために、そのクルマを持ち上げようとしているストロングマンがいたとする。凄まじい筋力が必要になる。

しかし、パワーは必要としない。クルマは重いのでゆっくりとしか持ち上がらないし、動かす距離も短い。そこにはスピードという概念がない。従って、パワーも出ていない。

次に、火を点けたロウソクの炎を数メートル離れたところからクンフーマスターに消してもらおう。使うのは裏拳(うらけん)だ。

この離れ業には、並外れたスピードが必要になる。しかし、動いている腕には小さな負荷しかかかっていない──慣性に働きかけるだけでいい──ので、筋力の方があまり使われていない。従って、ここでもパワーがあまり出ていない。

真のパワーは、筋力にスピードを乗じた数値である。数値(パワー)が一定の場合、負荷が大きいと筋力が必要になる。そのとき、スピードはあまり出せなくなる。

負荷が小さいと、筋力はあまりいらなくなる。そして、スピードが出せる。先のストロングマンとクンフーマスターの例からわかるように、あるドリルをやる上で必要になる筋力とスピードのバランスが悪いと、パワーを出す動作にはならない。


パンチやキックといったスピードに重点を置いたドリルをやっていても、巨大なバーベルを動かすような負荷に重点を置いたドリルをやっていても、パワーの鍛錬にはならない。筋力とスピードの間にある「中庸」は、体を負荷にしてすばやく動かすときに可能となる。

曲芸師やパルクールの熟達者のように重力に逆らって自在に動くこと──運動におけるパワーの本質はそこにある。

機能的スピードとは、短い距離内で全身をすばやく動かす能力を指す

奇妙に聞こえるかもしれないが、わたしは、「純粋なスピード」には興味がない。「純粋なスピード」とは何か?

伝説的なオリンピックコーチであるアル・マレー監督は、こう語っている。


だれかがスピードについて、あるいは、世界最速のアスリートについて話すのを聞いていると、不正確な表現を用いている場合が多い。

たとえば、数十マイルを記録的なタイムで走る男を「速い」と称するのは、実際には持久力について語っているので誤っている。

短距離を走る、パンチを出す、キックする、跳躍する、回転したりひねったりするといった単一の動作が速いとき。それが、わたしにとっての「スピード」になる。――アル・マレー 『Modern Weight-Training』(1963)


スピードのトレーニングマニュアルを読むと、この考え方に偏りすぎているものがある─指でコインを弾いてそれをつかむ、他のアスリートが落とした物差しをつかむといった「隠し芸」めいたドリルを推奨してくるからだ。

残念ながら、この種の「純粋なスピード」はあまり使い物にならない。我々は、体を全体的に動かしながら進化してきた。そして、四肢のどれか、または体の一部分を速く動かす必要性に迫られるときは、例外的な状況が多い。


だから、わたしが興味を持つのも「純粋なスピード」ではなく「機能的スピード」だ。それは全身を可能な限りすばやく動かす能力を指す。

これは、体全体を光速で動かせるようになるためのマニュアルだ。現実の世界では──スポーツをやるときとか、サバイバル状況にあるときなど──体の一部分だけを速く動かせても十分ではない。想像してほしい。


・障害物を飛び越える ・近寄ってくる敵からすばやく身をかわす ・兵士が射線(弾丸が飛んでくるアングル)を避けるためにダイビングする ・危機から脱するためにすばやく壁を乗り越える ・空中で体をひねり、安全に着地する


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