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<レップを積み上げる発想は筋肥大には有効だが、パフォーマンスと安全性の両方を損なう可能性が...>
日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』(CEメディアハウス)より「CHAPTER 10 いつステップアップするか?─PARCの原則」を編集・一部抜粋。
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レップを重ねていくスタイルは、筋力トレーニングやボディビルトレーニングではエンジン全開になるが、高速パワーテクニックでは失速する。理由は3つある。
1 レップはパワーではなく疲労物質をつくる
筋肉をつけたいときは、筋細胞内のエネルギーを消耗させることがゴールになる。筋細胞のサバイバルモードがオンになれば、次にくる同じ脅威に備えて筋細胞が化学物質を補充し、それを蓄えるようになるからだ。
定期的にそうしていれば、体に筋肉が詰め込まれていく。筋肉を疲弊させるメソッドはシンプルだ。
レップを追加する! それに尽きる。「トレーニング・ゴール」を撃ち抜き続けることが、生産的な結果をもたらすのはそのためだ。
一方、パワートレーニングのゴールは、筋細胞内のエネルギーを消耗することではない。速くて俊敏に動く体をつくることにある。そして、きびきびとした動作やスピードと疲弊は相容れないものだ。つまり、レップを増やすことをゴールにするのは誤りになる。
2 レップ追加は、ケガをするリスクを高める
前2冊『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』と『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』で紹介した技術には、体を安定的に動作させるものが多かった。それは、安全性が高い動作にもなる。
プッシュアップなら、「2- 1- 2のリズム」、すなわち、2秒間使って体を下ろし、ボトムで1秒間静止し、2秒間使って体を押し上げる。
このスタイルでレップを重ねれば、筋肉はゆっくり、そして(ここが決定的なところだが)よどみなく疲弊していく。そのまま作業を続けるとフォームが乱れ始める。
その辺を終了時間にすれば、動作の1ミリまであなたの意志でコントロールしていることになる。このやり方でトレーニングしていればケガをするリスクを限りなく低くすることができる。
イクスプローシブ・キャリステニクスは違う。体が飛行物体になる。そのため、筋肉(つまり意志力)で動作をコントロールするのが難しくなる。
フリップを例に取ろう──最初の爆発的なプッシュの後の動力源になるのは、勢いと重力だ。作業に集中していれば、確かに、ある程度までの自己制御が可能になる。
しかし、フリップで使う技術は、プッシュアップで使うシンプルな技術よりもはるかに速いし複雑だ。何かまずいことが起こっても、修正し直す時間が一瞬しかない。レップを重ねれば疲弊が進み、集中力も途切れがちになる。
そうなると、動作を制御することが──特に、何かがうまくいかなかったときの自己修正が──限りなくタフな作業になる。
以上見てきたように、イクスプローシブ・キャリステニクスでは、トレーニングゴールを設定してレップと格闘してはならない。技術を完璧に保つことができる、安全にこの1レップをクリアできる。そう感じるレップス数で止める。
追いかけるのは「完璧な動作」だ。それが「さらなる1レップ」なると、レップを重ねるごとにリスクが増していく。
3 レップをゴールにすると、焦点がぼやける
「レップを増やす」という考え方は、負荷の増加を定量化する必要があるシステム(筋力系キャリステニクスやバーベルトレーニング)でうまく機能するものだ。
しかし、イクスプローシブ・キャリステニクスは、負荷の増加を求めるものではない。効率性、スピード、パワー、複雑な動作をクリアすることが興味の対象になる。それらを観察するポイントは、動作が「完全にできているかどうか」だ。
レップをターゲットにすると、レップのカウントに注意力が割かれて、「完全にできているかどうか」から意識がそれる。この意味からも、レップス数を増やすという今までのマインドセットは避ける必要がある。
ここまでの説明で、ダブルプログレッションに馴染んでいるアスリートたちがレップ的なトレーニング・ゴールがない理由を理解してくれたら幸いに思う。
次の質問は、おそらく──特定のレップス数をゴールにしないとしたら、次のステップに進むタイミングをどう判断したらいいか? になるだろう。
ポール・ウェイド(PAUL "COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

『プリズナートレーニング 実戦!!! スピード&瞬発力編 爆発的な強さを手に入れる無敵の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田 雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
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