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<鍛えるべきは「筋肉」なのか...「最強の男」が残した答えについて>

日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング外伝 監獄式ボディビルディング』(CEメディアハウス)の「PART 6 筋力を究める道を行く」より一部編集・抜粋。


筋力について昔のストロングマンたちが語ったものを読むと、筋肉的なパワーに焦点を合わせたものと出会うのはまれだ。そして、彼らが筋力と言うときは、腱をどう強くし、完全なものにするかを語っていることがわかる。

ストロングマンの中でも最強のひとりである「アメージング・サムソン」ことアレクサンダー・ザス(1888年生まれ)の言葉を引用しよう。


お腹がふくらんでいるから消化能力が高い。そう考える者はいない。同じように、ふくらんだ上腕二頭筋も筋力を示す基準にはならない。それを決めるのは上腕二頭筋を引っ張る腱だ。

細い脚なのに、脚が太い男たちよりはるかに強い脚力を示す男がいる。なぜか?  筋力の本質が腱にあるからだ。

強度と密度において、骨に次ぐのが腱だ。それは、筋肉を骨に接合するための留め具でもある。腱の強さなくして大きな負荷に打ち勝つ筋力は生まれない。筋力を解放するためのマスターキー。それが腱だ。

腱のパワーを育てるメソッドはストロングマンごとに違っているが、筋力をつくる体系の核心に、腱トレーニングがあったことに変わりはない。腱をどう鍛えるか?

過去のアスリートは、それを「しなやかな強さ」をつくることだと考えた。「しなやかな強さ」を得る方法については、シリーズ2作目『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』(CEメディアハウス)で掘り下げた議論をしている。

腱と結合組織がもっとも鍛えられるのは「筋肉をストレッチさせたとき」だ。そして、プッシュアップやスクワットといったキャリステニクスの基本エクササイズを可動域いっぱいでやっていれば、腱をトレーニングしていることになる。

「しなやかな強さ」をつくるトレーニングと現代的なトレーニングは、両極のように離れている。ジムにいるボディビルダーは大きな筋肉と弱い関節がセットになっている。

彼らと話をすると、ボディビルダーの現実──いつも関節の痛みやケガを抱えている──を教えてくれるだろう。プロと呼ばれる人たちのおよそ半分は、まさにこの理由から鎮痛剤中毒になっている。


これは、動作のトップ域に焦点を絞り、そこで大きな負荷を筋肉にかけているからだ。レッグプレスマシンにいる男を観察すればわかる。彼は、凄まじい負荷をかけながら、トップ域に限定したわずかな距離でレップを繰り返している。

上半身ワークについても同じことが言える。現代的なボディビルダーの多くが、ケーブル型マシンに恋をしている。ケーブル型マシンで行う動作の多くがトップポジションで力のほとんどを使い、ボトムポジションではあまり使わない「ピーク収縮」をもたらすからだ。

筋肉を大きくするにはとても効果的だが、腱──動作のボトムポジションで負荷がかかる──には、ほとんどなにもしていない。このやり方を長く続けると、筋肉が大きくなるにつれ腱と関節が弱くなっていく。

強くなる筋肉と置き去りにされた腱や関節との間に不均衡が生じ、関節の痛みやケガにつながるのは当たり前の話だ。関節が痛むので、彼らは腱に負荷をかけることを避け、ますますピーク収縮に頼るようになる。

ベテランの域に入ったボディビルダーの多くは、ボトムからトップまでを対象にした動作を完全に止め、トップ域だけに固執するようになる。そして、何かが弾け飛ぶまで、問題を悪化させていくことになる。

・プルアップ
・プッシュアップ
・スクワット

といったキャリステニクスの基本動作は、ボトムポジションでストレッチさせた筋肉に負荷をかけてトレーニングするものになる。


筋肉はストレッチすればするほど収縮できなくなるのだが、そのとき、負荷を受けもつことになるのが腱だ。そのため、可動域いっぱいの深い動作をやると腱に大きな負荷がかかり、それを強くするためのトレーニングになる。

負荷という意味では、もっともナチュラルな負荷──体重──を使うので、腱を痛める可能性も低い。キャリステニクスをやることが現実世界で通用する強さにつながるのは、生活上の動きと変わらない全可動域を対象にすること、腱を鍛えて「しなやかな強さ」をつくるものになるからだ。

筋力を最大化するための戦略


・ 腱トレーニングとは、筋肉をストレッチさせたときに腱に負荷がかかるエクササイズを指すが、キャリステニクスの基本動作にはそれが含まれている。腱を鍛えたかったら、キャリステニクスをやれ!

・ 安全が保てる深さ内で、行けるところまで行く(誇張した動作は避けること)

・ ボトムポジションで静止すると効果が増す―動作を反転させるときは、絶対、弾むな!

・ ボトムポジションで負荷がかからないマシンやエクササイズは避けろ!


ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で 〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

  『プリズナートレーニング外伝 監獄式ボディビルディング』
  
  ポール・ウェイド [著]/山田雅久 [訳]
  CEメディアハウス[刊]


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