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<柔軟性と筋力を同時に鍛え上げるメソッドは、現代フィットネスの常識とは真逆の発想から生まれた>

日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「12章 しなやかな筋力」より一部編集・抜粋。


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人並み外れて強い関節をつくるにはどうすればいいか。

キャリステニクスに精通し、今は歴史の闇の中に消えてしまった囚人アスリートたちに共通する教えがあるとしたら、それは、ジョー・ハーティゲンが「腱のしなやかな強さ」と呼んでいたものを手に入れることだろう。

昔の囚人アスリートたちは誰もが、しなやかな強さとは何かを知っていた。しかしそれは、現代人には理解しがたいものになっている。

そこで、わたしはその用語を「筋緊張させた時の柔軟性」と呼んでいる。腱と関節を強くする「秘密」があるとしたら、それはこの章で見つけることができる。

では、筋緊張させた時の柔軟性とは何か? それは、筋肉をストレッチした時にも緊張し続け、強いままでいられる筋力を指す。

体が伸びたり意識的にストレッチさせたりした時に緊張し、そこで強さを発揮するように進化したのが腱だ。腱に弾力性があるのは、そのためだ。

ヒトを含めた動物が、ジャンプしたり、弾んで動いたり、爆発的な動きができたりするのは、腱が持つその性質によるところが大きい。ストレッチした筋肉がリラックスしていたら、強さとパワーが発揮されることはない。

自重力アスリートと体操選手は、彼ら特有のトレーニングを重ねるうちに「柔軟性」に対するこの見方を理解していく。しかし、これは現代のフィットネス世界で語られている「柔軟性」とは一致しないものだ。

柔軟性には、「しなやかさ」と「やわらかさ」の意味が含まれているが、現代のフィットネス世界で通用する「柔軟性」は「やわらかさ」を指すことが多い。


 

ほとんどのコーチは、筋肉をストレッチする、つまり伸ばすことについて語る時、自動的にそれをリラクゼーション(緊張を解くこと)に結びつける。

誰もがやっている受動的ストレッチが、意図的にリラックスさせていく技術だからだ。そして、ストレッチした筋肉がリラックスするのは当然のことだとされている。

しかし、そうだろうか?

随意運動は、関節の片側の筋肉が反対側の筋肉よりも強く緊張することで起こる。しかし、それは、緊張していない方の筋肉がまったく緊張していないということではない。

実際には、強く緊張しうる。そして、もう一方の筋肉の緊張を超えない限り、随意運動は変わらず起こる。

筋肉がストレッチしながら強く収縮しなければならない例はたくさんある。大腿四頭筋と膝蓋腱をストレッチする時、何をするだろうか?

『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』169頁

ほとんどのアスリートは、足首をつかんで、かかとを尻方向へと引っ張る。膝関節を曲げると、大腿四頭筋と膝蓋腱が伸びるからだ。

この動作は筋肉をリラックスさせた時の柔軟性を示す良い例だ。大腿四頭筋がリラックスし、膝関節が伸びている。


 

しかし、同じアスリートにしゃがみ込んでワンレッグ・スクワットをやってもらったら、どうなるだろうか?

『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』169頁

ワンレッグ・スクワットは一般的には筋力エクササイズとみなされる。絶対にストレッチ運動には見えない。

ところが、この写真を観察すると、膝関節が完全に曲がっているのがわかる。実際、足首をつかんで膝を曲げた時よりもさらに曲がっている。

つまり、膝の腱がストレッチしている。このように、大腿四頭筋と膝蓋腱がぎりぎりまでストレッチしているにもかかわらず、その姿勢で多くの緊張をつくり出している。

それどころか、膝を完全に曲げた姿勢で、強い緊張状態をつくり出さなければならないことはあきらかだ。


 

緊張していなければ、一時静止しているボトムポジションから動きだし、立ち上がることができないからだ(つまりスクワットにならない)。

上半身であればアンイーブン・プッシュアップが似た例になる。アンイーブン・プッシュアップでは、肘が最大限まで曲がる。一方で、ボトムポジションから体を押し上げるため、強く緊張するよう上腕三頭筋に強いることになる。

スクワットのボトムポジションでストレッチしているのは大腿四頭筋だけではない。写真を見れば、股関節の右側が伸びていることがわかる。つまり、臀筋もストレッチしている。それも、太ももが体幹を圧迫するほどに。

臀筋は、同時に姿勢を維持するために岩のように緊張している。それが体を押し上げる時のモーターになる。足首の屈曲度も高い。この例から、ストレッチした筋肉がとてもパワフルなものになりうることがわかる。


ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

 『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』
  ポール・ウエイド [著]/山田雅久 [訳]
  CEメディアハウス[刊]


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