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<プリズナートレーニングを支える「食の哲学」について>

日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「19章 ザ・監獄ダイエット」より一部編集・抜粋。


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囚人アスリートの食事といっても特別なものはない。法律的にも、食事を出さなければならない監獄のような施設を縛る定めはなく、憲法修正第8条と、州それぞれの内規があるだけだ。国から要求されているのは、1日3回、食事を出すことだけ。

そのため、食事内容は施設によって大きく変わる。

収監されたばかりのボディビルダーの多くが、「健康的な食事」を目指して涙ぐましい努力をする。食堂係が皿に乗せる食べ物の中から好ましいもの─肉、卵、野菜─を選んで食べ、ポテトフライやプリンなどのジャンクフードを控える。

時には、自分の皿の上にあるジャンクフードを、他の囚人の皿の上の栄養豊富な食べ物と交換しようとする。ところが、その努力が3週間を超えて続くことはまれだ。

健康的な食事をしたいという欲求を、カロリーが欲しいという欲求が上回るようになり、いつしか何でも食べるようになる。以前の食事スタイルから監獄の食事スタイルに変わっていくのだ。

わたしは代謝がいい。そのため収監されたばかりの頃は、満腹感を得ることがあまりなかった。毎日欠かさずトレーニングをやるようになっていたし、日によってはハードな自重力トレーニングを何十セットもやったからだ。

それでも工夫を凝らすことで、ついには監獄の食事でもうまくやっていけるようになった。すばらしいメニューとはとても言えないが、少なくとも飢えることはない。どれほど激しくトレーニングしようと、その程度の食事で十分なのだ。

監獄式のメニューと食べ方

監獄ごとに異なる食事ガイドラインがあるため、標準的なメニューを示すことはできない。季節や所在地によっても食事内容が変わる。

しかし、囚人はこんな種類の食事をしているのだと参考にしてもらえるメニューを示すことはできる。以下に示すのは2日分のサンプルメニューだ。

「フィットネスに適した食事」からは程遠いメニューだし、こんな食事では、筋力も筋肉もつくはずがないと考えるかもしれない。

しかし、囚人たち──なかには本当にすばらしいアスリートもいる──は、こうした食事を何年も続けながら体をつくり上げていくのだ。

『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』262頁より

「フィットネスに適した食事」は複雑だ。その複雑な食事法に迷い込む前に、監獄アスリートたちの食事ガイドラインから学ぶことがあるかもしれない。


・アスリートにとって大切なのは規則性だ。毎日同じ時間に食べるようにすれば、いつ栄養が入ってくるか体が理解するようになる。

・日々のトレーニングに必要なカロリーを摂取する。ハードにトレーニングしている時は、ほどほどであれば、ケーキやゼリーやキャンディといった「ジャンク」を遠ざけなくても大丈夫だ。

・食べ過ぎない。代謝がいい人は、食事間の軽食1回(2回でもいい)は許容範囲だ。普通の代謝なら1日3回の食事で事足りる。体が大きいアスリートも食事回数を増やす必要はない。体格に比例させて、1回に食べる量を増やすようにする。

・食事の席に着いたら、腹が空いていなくても、しかるべき量を取る。食事を抜くと後で空腹になり、疲れを感じやすくなるからだ。そのうち体の方で食べ物が入ってくる時間がわかるようになる。こうなれば、食事時間が来ると自動的に腹が空いているパターンができ上がる。

・バランスの取れた食事を心がける。「バランスを取る」とは、毎日、肉、穀類かシリアル、乳製品(牛乳、チーズ、卵など)、野菜、果物を食べることだ。ベジタリアンの場合は乳製品に重点を置く。

・常に水分を補給する。食事の際には常に何か飲み、食間にも水分を取る。

プロテイン粉末や栄養バー、サプリに金をつぎ込む前に、このシンプルなルールに従ってほしい。トレーニングがやりやすくなって、手の込んだ食事が必要ないことに気づくだろう。

ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

 『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』
  ポール・ウエイド [著]/山田雅久 [訳]
  CEメディアハウス[刊]


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