
重要なのは、ウォーキングなどの身体活動を習慣化することだ OLIMPIK/SHUTTERSTOCK
<健康のためには「1日1万歩」が理想――そんな常識に挑む日本発の新しいウォーキング法が、いま世界で注目を集めている>
日本生まれのエクササイズが、海外のSNSで大きな話題になっている。
最小限の用具と時間で、大きな健康効果を得られるというインターバル速歩だ(海外では「Japanese Walking(ジャパニーズ・ウォーキング)」として知られている)。
信州大学の能勢博特任教授と増木静江教授らのチームが考案・研究しているインターバル速歩は、早歩きとゆっくり歩きを交互に繰り返す運動だ。
それぞれ3分間の1セットを1日5セット以上、週4日以上行う。
早歩きは「ややきつい」強度で、きちんと話をするのが困難な程度のスピードで歩く。ゆっくり歩きは「息を整える」強度で、活発に会話するのは難しくても、話は普通にできるペースだ。
インターバル速歩は、強い負荷の運動と短い休憩を繰り返す高強度インターバルトレーニング(HIIT)と似ている。とはいえHIITほどつらくはなく、負荷がより少ない。
始めるのも簡単で、必要なのはタイマーと歩く場所だけ。
プログラム作りもほぼ不要で、「1日1万歩」を目指すなどほかのタイプのウォーキングと比べて時間もかからない。大半の人に適している運動だ。
その健康効果は大きい。能勢らが2007年に発表した研究では、インターバル速歩と、1日8000歩以上歩く中強度のウォーキングを比較。
インターバル速歩を行ったグループは体重が目立って減少し、中強度ウォーキングの場合より血圧も低下していた。脚力や身体的健康状態も大幅に改善している。
さらに、より長期的な研究によれば、加齢に伴う体力や健康の低下を防ぐ効果も確かめられている。
「1日1万歩」と比べて
こうした健康状態の改善効果は、今のところ研究で直接的に実証されていないものの、インターバル速歩が寿命を延ばすことに役立つ可能性を示唆している。
一方、考慮すべき点もいくつかある。前出の07年の研究では、インターバル速歩グループの対象者のうち約22%がプログラムを完了しなかった。
中強度ウォーキングでは、その割合はおよそ17%。つまり、インターバル速歩は全ての人に適した運動ではない可能性があり、歩数ベースのウォーキングより、手軽でも魅力的でもないのかもしれない。
1日に特定の歩数を達成するウォーキングにも、寿命延長に貢献する効果があることが分かっている。60歳以上の場合、目標歩数は1日約6000~8000歩。
60歳未満なら1日8000~1万歩が理想とされる。インターバル速歩の場合、こうしたエビデンスは(少なくとも現時点では)存在しないようだ。
国際的に注目される新たなウォーキングトレンドは、果たして究極のエクササイズなのか。それとも、どんな運動をするかではなく、運動の頻度と負荷がより重要なのか。正しいのは、おそらく後者だ。
研究で判明しているように、中~高程度に活発な定期的身体活動をより多く行う人は、1回の身体活動の時間の長さにかかわらずより長く生きる。
言い換えれば、重視すべきなのは、中~高程度に活発な身体活動を習慣にすること。それがインターバル速歩なら、やるだけの価値はある。
Reference
Nemoto K, Gen-no H, Masuki S, Okazaki K, Nose H. Effects of high-intensity interval walking training on physical fitness and blood pressure in middle-aged and older people. Mayo Clin Proc. 2007 Jul;82(7):803-11. doi: 10.4065/82.7.803. PMID: 17605959.
Sean Pymer, Academic Clinical Exercise Physiologist, University of Hull
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。