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<リラクゼーションは万能ではない。正しい身体の使い方について>
日本でも定着した「自重トレーニング」。その伝道者で元囚人、キャリステニクス研究の第一人者ポール・ウェイドによる『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』(CEメディアハウス)の「CHAPTER 12 しなやかな筋力」より一部編集・抜粋。
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リラクゼーションとケガ
受動的ストレッチが好ましくないのは、筋伸張反射を少しずつ非活性化させてしまうところにある。緊張を弛緩に置き換えてしまうのだ。
熱い湯に浸っている時なら気持ちいいだろう。しかし、何かにチャレンジするために体を動かしている時には好ましいものではない。
リラックスしている時の体は信じられないくらい傷つきやすい。腕と脚だけでなく、体幹もそうだ。ボクサーに殴られる準備──つまり、筋肉が緊張した状態──ができていないと、たった一発のパンチで試合が終わる。
空手家に聞いてみればいい。何世紀もの間、彼らは体を緊張させるエクササイズをやってきた。突きや蹴りが当たった時、筋肉や腱をピンと張って体を硬くし、内臓を守る鎧にするためだ。
空手には筋伸張反射をよくするトレーニングが多く、それが戦闘中の衝撃から身を守る。パラシュートで着陸する時と同じように、着地する時の体操選手も、突っ張るように脚をピンと張る。
オリンピックの飛び込み選手も、着水時に体を緊張させる。大きな力に突然さらされることでケガをする可能性が高い運動分野では、筋伸張反射をよくする技術が必ず教えられる。筋肉を緊張させることが体を守るからだ。
酔っぱらうと体はリラックスする。だから転んでもケガをすることが少ない、という話を聞いたことがあるだろう。愚かな迷信だ。週末の緊急救命室で働く医師がそれを知っている。週末の彼らが扱うのは、ほとんどが酔っ払いのケガだ。
コンクリートの上で転ぶのは、シラフの時でも十分すぎるほどの悲劇になる。しかしリラックスした酔っ払いが転ぶと惨劇になる。下手をすると死ぬ。
酔っ払っての転倒が重度の頭部外傷につながるのは、頸椎がリラックスしているからだ。アスファルトに当たった時の衝撃から頭を守る筋伸張反射が起こらない。
過度のアルコールが神経系に干渉し、筋伸張反射をのろまにするのだ。酔っ払うと気持ちと体がゆるんで楽しいが、その間、体は傷つきやすくなっている。
しなやかな筋力をつくる際に気をつけたいこと
しなやかな筋力をつくるワンレッグ・スクワットのようなエクササイズは、関節を強化したい時には、この上もないものだと言える。
■【写真】ワンレッグ・スクワット を見る
しかし、関節は一晩で強くなるものではない。腱や軟組織がエクササイズに適応するまでの時間が必要になる。
少しずつハードになっていくキャリステニクスが、簡単なエクササイズから始まる理由がここにある。無理のない速度で腱を強くしていくためだ。
クローズ・プッシュアップのような筋肉にとってハードなエクササイズは、腱にとってもハードだ。
いきなりそこに突撃するのは無謀に過ぎるし、そこにあるように見える自分の能力は幻想だ。誰の腱も最初は弱い。長い時間をかけてクローズ・プッシュアップに近づくアスリートが、強くて健康的な腱や関節を手にできる。
しなやかな筋力をつくるトレーニングでもうひとつ大切なのは、負荷をかけながら筋肉をストレッチすることだ。
しかし、「ストレッチする」ことは「ストレッチしすぎる」ことを意味しない。正常な範囲内で四肢を伸ばすだけでいい。しなやかな筋力をつくるのに曲芸師になる必要はない。
最後のアドバイス。筋肉を伸ばしながら負荷をかけるトレーニングでは、自然な力学に従うようにする。無理矢理やっている感じがしたり、痛みを感じたりするエクササイズには近づくな。
首の後ろにバーを置いてプレスしたりプルダウンしたりすると、負荷をかけながら筋肉を伸ばすことができる。
しかしローテーターカフ(回旋筋腱板)を不安定な状態に置く。バーベルプレスや多くのマシンでも同じことが起こる。避けた方がいい。
LIGHTS OUT! 消灯!
「しなやかな筋力」を望むなら、きらびやかなマシンや奇妙なエクササイズ、高価なサプリメントは必要ない。昔ながらのキャリステニクスをやり続ければいい。
関節可動域いっぱいに体を動かすが、抵抗が小さいトレーニング(ジャックナイフ・スクワット、ウォール・プッシュアップ、ヴァーチカル・プルなど)から始め、漸進的にステップアップしていく。
体重の多くを使うエクササイズ(フル・スクワット、フル・プッシュアップ、フル・プルアップ)にステップアップしたら、片腕・片脚だけを使うエクササイズ(ワンレッグ・スクワット、ワンアーム・プッシュアップ、ワンアーム・プルアップ)を目指す。
監獄で教えられるこのアプローチ法は、筋力だけでなく関節も驚くほどパワフルにするのだが、安全にそのパワーを授けるやり方になる。
腱や軟組織に、筋緊張させた時の柔軟性をつくる時間を与えるからだ。強くて健康的な関節がほしいなら、しなやかな筋力をつくるルーチンから離れないことが王道になる。
ポール・ウェイド(PAUL"COACH" WADE)
元囚人にして、すべての自重筋トレの源流にあるキャリステニクス研究の第一人者。1979年にサン・クエンティン州立刑務所に収監され、その後の23年間のうちの19年間を、アンゴラ(別名ザ・ファーム)やマリオン(ザ・ヘルホール)など、アメリカでもっともタフな監獄の中で暮らす。監獄でサバイブするため、肉体を極限まで強靭にするキャリステニクスを研究・実践、〝コンビクト・コンディショニング・システム〟として体系化。監獄内でエントレナドール(スペイン語で〝コーチ〟を意味する)と呼ばれるまでになる。自重筋トレの世界でバイブルとなった本書はアメリカでベストセラーになっているが、彼の素顔は謎に包まれている。

『プリズナートレーニング 超絶!! グリップ&関節編 永遠の強さを手に入れる最凶の自重筋トレ』
ポール・ウェイド [著]/山田雅久 [訳]
CEメディアハウス[刊]
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